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工学博士が読み解く『シン・ゴジラ』――ゴジラがデフレギャップを解消する

ゴジラ上陸で株も円も国債も大暴落!

――まさか、今の日本でも戦争が起きればデフレギャップは解消されると? 木下:私は平和主義者です。戦争なんて望みません。しかし、戦争によらず日本の過剰な供給源を一気に激減させてくれるのがゴジラなのです。東京湾から上陸したゴジラは東京を半壊させました。映画内ではゴジラの襲撃後、「株も円も国債も大暴落だ!」と叫ぶシーンがありました。あれだけの衝撃が起これば、投資家は落ち着くまで日本株や国債を手放さざるをえない。つまり供給源の激減によりデフレギャップは解消され、市場は暴落してデフレギャップバブルも一掃される。その結果、デフレギャップを抱えた「反の経済」(デフレギャップ状態の経済を示す木下氏の造語)から、通常の「正の経済」(インフレギャップ状態の経済)へと復帰できるのです。 ――しかし、ゴジラにどこまでの知能があるか不透明。「デフレギャップを解消させる程度の破壊にしてくれ」とお願いしたところで、日本全土を蹂躙するでしょう。 木下:日本が得意とするロボット技術を活用すればいい。ゴジラにAIを搭載し、メカゴジラ化にすればいいでしょう。……冗談です。ゴジラのような怪獣が本当に出てくれば、こんな与太話はしていられないでしょう。しかし、『シン・ゴジラ』の大ヒットは、「日本経済が抱えている“シン”の問題は何か」を私たちに問うているのです。 ――『シン・ゴジラ』の“シン”からは「新」と「真」の2つの意味が読み取れます。 木下:日本経済が抱えているデフレギャップこそ「真」の問題であり、デフレギャップバブルという「新」問題が起きていることを政府・日銀は認識すべきでしょう。そうでなければ、我々はゴジラの上陸を待つまで、永遠のデフレギャップに苦しむことになってしまいます。  これまで世界中のどんな経済学も有効に機能したことはなかった。しょせん机上の空論である経済学に新たな展望をもたらした「正と反の経済学」の詳細は新刊『資本主義の限界』でぜひ確認してもらいたい。〈取材・文/高城泰 撮影/岡戸雅樹〉 【木下栄蔵(きのした えいぞう)】 1949年、京都府生まれ。1975年、京都大学大学院工学研究科修了、現在、名城大学都市情報学部教授、工学博士。この間、交通計画、都市計画、意思決定論、サービスサイエンス、マクロ経済学などに関する研究に従事。特に意思決定論において、支配型AHP(Dominant AHP)、一斉法(CCM)を提唱、さらにマクロ経済学における新しい理論(Paradigm)を提唱している。1996年日本オペレーションズリサーチ学会事例研究奨励賞受賞、2001年第6回AHP国際シンポジウムでBest Paper Award受賞、2005年第8 回AHP国際シンポジウムにおいてKeynote SpeechAward受賞、2008年日本オペレーションズリサーチ学会第33回普及賞受賞。2004年4月より2007年3月まで文部科学省科学技術政策研究所客員研究官を兼任。2005年4月より2009年3月まで、および2013年4月より名城大学大学院都市情報学研究科研究科長並びに名城大学都市情報学部学部長を兼任。8月12日に新刊『資本主義の限界』(扶桑社)を発売
1975年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。編集プロダクション「ミドルマン」所属。株、FX、仮想通貨など投資関係の記事を幅広く執筆。著書に仮想通貨の入門書『ヤバイお金』(扶桑社)、『FXらくらくトレード新入門』(KADOKAWA)など
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資本主義の限界

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