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草野球にハマるオシャレ業界人が急増中!なんで?

―[山田ゴメス]―
ベテランライターが原点回帰のドサまわり。独断と偏見で選んだ、巷をにぎわすニュースを猛追跡! 【記者・ゴメスが追う 第7回】  草野球歴8年の僕であるが、近ごろ、ファッション・美容・音楽……といった、いわゆるオシャレ業界で働く人たちのつくったチームが、やたら目につく。なんでだろう? オシャレ業界と野球。一見、対極にあって、まったく相いれない気もするんだが……。売れっ子ヘア・アーティストで、現在「ストーンズ東京」という草野球チームを監督として率いる石井康幸さんに、草野球の魅力を伺った。
草野球,ストーンズ東京

「GBN全国草野球大会」という、ベースボールマガジン社が主催する大会の関東地区3部で、120以上の強豪チームのなかから準優勝の結果を残し、来期からは2部へと昇進する「ストーンズ東京」。ちなみに決勝戦はナゴヤドームで行われた

──「ストーンズ東京」の、現在の活動内容を簡単に教えてください。 結成が’06年なので、’11年で丸5年です。年2回のトーナメント大会出場と年1回の合宿を入れて、だいたい年間40日くらい活動しています。 ──ほとんど週一のペース! かなりガチですね。 ただ、震災の影響もあって、これでもだいぶ減っちゃったんです(笑)。 ──メンバー構成は?
石井康幸

草野球の魅力を軽快に話す石井さん

今のチームメンバーは、一番下が大学生で一番上は44歳。年齢的には42歳の僕を含め、30歳を越えている人が多いです。仕事は、ファッション関係、カメラマン、ヘアメイク、スタイリスト、音楽関係、雑誌関係、広告代理店、アーティストのマネージャーなどです。やはり僕のまわりにいる人たちを集めたわけだから、結果的に業界っぽいメンバーがメインになっちゃいましたね。 ──ほかにもオシャレ業界の人たちが結成する草野球チームは多いんですか? 間違いなく増えていると思う。アパレルのデザイナーチームが案外強かったり、美容師系の人が火曜日に集まって活動しているケースだったり……。 ──とても失礼な話だけど、そういう人たちは、どちらかと言えばナヨッとした印象で、野球からもっともかけ離れたところにいるような気もするが? 僕たちの仕事って、基本的には職人じゃないですか。だから、意外と根性があるっていうか、体育会系の人が多いんですよ。それに、僕たちみたいなフリーランスの人間は、逆に団体競技への憧れが強いんです。仕事上では、みんなライバルで、極論おたがいの仕事を取り合っているわけだから。 ──なぜ、サッカーやフットサルじゃなく、野球を? 僕の場合は、たまたま中学まで野球をやっていたからなんですけど……。一般的には、野球のほうが年をくっても長く続けられるからじゃないかな? ほら、イチローさんも「腹が出てもできるスポーツは野球だけ!」って言ってるし(笑)。あと、野球には打順があるから、一試合でかならずメンバーひとり一人に順番が回ってくるのも大きい。団体競技でありながら個人競技の要素も強いんですよ。ユニフォームのデザインだって、帽子やズボンがあるから、サッカーより本格的で凝ったものができる。結成してすぐユニフォームをあれこれ考えるのも、草野球の醍醐味のひとつですから。 ◆徹夜して並んでグラウンドを確保 ──草野球チームを運営するのに一番苦労することは? やっぱり一番はグラウンド確保。たとえば神宮の軟式グラウンドだと、(土日に使用するには)徹夜して並ばなきゃ取れないんですよ。これまでの4年間は、ずっと僕ひとりでそれをやってました。毎月13日の夜中から並んで、14日の朝5時半に名前を書いて、14日の夕方にもう一度番号札をもらいに行って、さらに15日にお金を払いに行く……。だから結成から4年間は、毎月13日〜15日は仕事を入れなかった(笑)。さすがに最近は、メンバーで交代でやるようになりましたけどね。 ──それは大きな負担ですね。 でも、最初はそこまでやんないと草野球の運営はできないんですよ。続いているチームは、どこでも大なり小なり監督がそれに近いことをやっていると思う。へたに人にまかせて、「寝坊しちゃいました……」なんてことになると、1ヶ月間野球ができなくなるわけですから。 ──メンバー集めも苦労する点だと思いますが? これがまた大変デリケートな問題で、今でも常に自問自答しています。当然、チームを強くはしたい。でも、しょせんとは言いたくないけど、素人の集まりじゃないですか。そこのバランスの取り方がイコール監督の色、チームの色になるといっても過言じゃない。ある意味、高校野球やプロ野球の監督より難しいと思いますね。だって、彼らはとりあえず“勝利”という目的だけに向かって、舵を取ればいいんだから。上手い下手だけでメンバーを判断できるから。草野球では、下手でもいっぱい来ている人を出してあげたいし、逆に仕事の関係であまり来れない人も出してあげたい……。 ──そんななか、石井さんはどういった線引きをしているんですか? 社会人である以上、仕事優先なのは当たり前で、出席率に個人差が出てくるのもしょうがない。ただ、そこでたまにしか来ないけど上手いから出す、いつも来てるのに下手だから出さない、なんてことをしていると、おかしいことになっちゃう。だって、下手な人たちが来てくれないと9人そろわないこともあるじゃないですか。9人いなきゃ試合はできないわけだし。だから、これが正しいかはよくわからないですけど、とりあえず僕は、よく来る人優先という姿勢を取っている。一生懸命来ている人は未経験であろうが上手くなかろうが、優先的に試合に出す。結果、辞める人も出てきて、一番多かったときは30人以上いたチームが、今は実質20人くらいに落ち着きました。でも今のメンバーは、本当に忙しい人たちばかりだけど、積極的にスケジュールを調整して参加してくれています。 ──これから草野球チームをつくる人たちへのアドバイスをお願いします。 まずは、グラウンド確保のルートを整理することですね。これはインターネットでもいろんな情報が流れているし、すでに活動しているチームの人から教えてもらってもいい。 次に、試合するときはどんなしょぼい試合でも必ず審判を雇うこと。おたがいのチームから(審判を)出し合うのは、やめたほうがいい。神宮球場にも審判協会っていうのがあって、1試合7000円くらいで雇えます。相手メンバーと割ったら、たいした額じゃないでしょ? 緊張感がなければプライベートでわざわざ時間つくって遊ぶ意味がないですから。 あと、野球というのは、試合だと(草野球は通常2時間7回まで)ピッチャー、キャッチャー、ファースト以外はボールに全然触れないってケースも珍しくないので、試合ばっかりじゃなくて練習もやるべき。ウチは練習と試合の比率が約半々で、むしろ練習がちょっと多いくらい。これがメンバーを飽きさせないコツなんです。試合に負けて、なんで負けたかを修正する練習をすれば、次の試合がまた楽しみになってくる。家族を持っているメンバーには、野球に行く代わりに(奥さんに悪いので)家で皿を洗って子守りをする人だっているんです。そこまでさせる魅力を草野球の中につくってあげなきゃ。家族や彼女を試合に連れてくるのも大歓迎です。夫婦円満にもなるし、「今度、試合観にこない?」って、ナンパの手段にも使えるかもしれない(笑)。 ──石井さんはこれからストーンズをどのようなチームにしていきたいですか? 僕個人としては、水島(新司)先生みたいに、おじいさんになるまで野球を30年間続けたい。そしてストーンズを、僕が死んでも残るチームにしたい。よく試合に出ているメンバーが、出て当たり前と思うようなチームではなく、出ている人が出ていない人のために頑張る、みたいな自己犠牲も厭わないチーム。これが大人の遊びであり、優しさであり、愛、野球愛だと思う。今どきだとクサイ考え方なのかもしれないけど、カッコ悪いことがカッコイイんですよ。 【山田ゴメス】 1962年大阪府生まれ。マルチライター。エロからファッション、音楽&美術評論まで幅広く精通。西紋啓詞名義でイラストレーターとしても活躍。日刊SPA!ではブログ「50にして未だ不惑に到らず!」(https://nikkan-spa.jp/gomesu)も配信中。現在「解決!ナイナイアンサー」(日本テレビ系列)(http://www.ntv.co.jp/99answer/)に“クセ者相談員”として出演。『クレヨンしんちゃん たのしいお仕事図鑑』(双葉社)も好評発売中! 取材・文・撮影/山田ゴメス
大阪府生まれ。年齢非公開。関西大学経済学部卒業後、大手画材屋勤務を経てフリーランスに。エロからファッション・学年誌・音楽&美術評論・人工衛星・AI、さらには漫画原作…まで、記名・無記名、紙・ネットを問わず、偏った幅広さを持ち味としながら、草野球をこよなく愛し、年間80試合以上に出場するライター兼コラムニスト&イラストレーターであり、「ネットニュースパトローラー(NNP)」の肩書きも併せ持つ。『「モテ」と「非モテ」の脳科学~おじさんの恋はなぜ報われないのか~』(ワニブックスPLUS新書)ほか、著書は覆面のものを含めると50冊を超える。保有資格は「HSP(ハイリー・センシテブ・パーソンズ)カウンセラー」「温泉マイスター」「合コンマスター」など
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