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これまでの「キャリアを捨てる」勇気――東大卒、元マッキンゼーのお笑い芸人・石井てる美


飯田:もともとお笑い芸人になりたかったんですか? 石井:人生がもう一個あればやりたかった! で、死にそうな思いをしてようやく、人生はもう一個ないことに気づかされた、って感じですね。先ほど言ったみたいに、マッキンゼーは挫折して続けられなかったのが実情ですが、同時に、レールの敷かれた人生にワクワクするものを感じてなかったというのも確実にあって。マッキンゼーに就職したのも経営コンサルになりたかったというよりも、やっぱり、マッキンゼーだったからなんですね。本当にやりたかったことに挑戦すれば、ワクワク感は得られるんじゃないかって思ったんです。 飯田:その決断と挑戦で、失ったものはありますか? 石井:そりゃあ、お金です!(笑) この前、大手商社に勤める大学の同級生の給料聞いてふっとびそうになりました。「そんなにもらえるんだ!」って(笑)。そりゃあ、わざわざリスク取らないよなって。 飯田:アラサー東大出身あるあるですね(笑)。しかし、仕事において、何を達成感とするかは人それぞれ。大きなプロジェクトやデカい金額を扱うことに興奮できる人もいれば、自分でコントロールしているグリップ感が楽しい人もいる。例えば僕の業界では40歳を過ぎると大学行政や学会の幹部、あとは政府のお仕事が増えてきたりするんですが……僕はそういう仕事よりも反応が目に見えるメディア仕事や講義のほうが楽しかったりもする。ライブ感がある喜びというか。 石井:自分のやっていることの意味や価値が、ダイレクトに感じられるのは嬉しいですよね。その仕事を続けていくのって、「好きかどうか」「得意かどうか」「将来的な目標を抱けるか」の3つの条件があると思うんです。これに一つでも「YES」と思えたら、続けていけるんだと思います。 飯田:メディアに出るときに、「東大卒」ってついてまわるじゃないですか。めんどくさくないですか。 石井:その肩書でテレビのお話をいただくこともあり、ありがたいんですけど、「東大出たけど~」とか「東大っぽいことを言ってほしい」とかは飽きてきましたね。でも例えば、香川照之さんのことを東大卒だって誰も言わない。結局、そうなっていない自分がいけないんだなって思います。 飯田:確かにそれは言えますね。 石井:お笑いでも、その肩書を超えないといけないなって思うんです。先日、『有田ジェネレーション』に出させていただいて、初めて一切東大卒といった経歴に触れずに、ネタだけで笑ってもらえて。それは、本当に嬉しかったですね。 飯田:じゃあ今、一番楽しいのはネタを考えることですか? それともライブ? 石井:ネタを考えるときはしんどいし、舞台では緊張するんですけど、それがウケたときが一番嬉しいですね。よく言われることですが、芸能界の中でもお笑いは実力で測られる世界。事務所は一切関係ないとは言いませんが、面白ければ売れていくのは確か。イロジカルなものが働いていないので、挑戦のしがいがあるんですよね。 【石井てる美】 ’83年生まれ。東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。2008年、マッキンゼーに入社。お笑い芸人を志し、翌年夏に退社。ワタナベエンターテインメントの養成所を経て、お笑い芸人に。現在、ライブなどで活動中。持ちネタは、TOEIC満点の英語力を活かした「ヒラリー・クリントンの物まねコント」「言いづらい言葉を英語っぽく言う」など 【飯田泰之】 ’75年生まれ。エコノミスト、明治大学准教授。「今年の夏休みも目標未達で終了。この雰囲気だと目標通りの夏を過ごしたら死ぬんじゃないかと思えてくる」
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