お金

こんな自由にお前は出会ったことがあるか――連続投資小説「おかねのかみさま」

同日 22:45 蒲田 スナック座礁 「ママさんや」 「ナァに学長?」 「わし、そろそろこの柿の種というものを食べはじめて40年くらいになるんじゃが」 「あらすごいわね」 「飽きないもんじゃ」 「おいしいわよね」 「でもな、たまにはなんか他のものがあってもいいんじゃないかともおもう」 「たとえば?」 「そうだな。おせんべいで言えばぽたぽた焼きが好きなんじゃけどな」 「ぽたぽた焼きぃ~?なんかオウチみたいになっちゃうじゃない。ここはスナックなんだからもっとこう緊張感もっていかないと」 「ちがうんじゃママ。ちがう」 「なにが」 「ワシがこの店にもとめているのはそんな夜の街っぽさじゃなくて、何も考えなくていい自由さなんじゃ」 「柿の種でもいいじゃない」 「いいんじゃ。確かに柿の種でも。だけどこの小さめの入れ物に入った柿の種を三本くらいの指でつまむと必ず一粒落ちそうになるじゃろ。これがいけない」 「袋ごとどうぞ」 「い…いいのか…わるいな…」 「どーーーーーーーーーーぞ」 「ザー…モッシャモッシャ」 「こんばんみー」 「あら村ちゃんいらっしゃい」 「お、ジジイ、夜食か?」 「自由だ。こんな自由にお前は出会ったことがあるか?」 「よくわかんねぇけどお前は生まれつき自由だろ」 「むらちゃん今日は飲んでないのね?」 「あ、うん、仕事長引いてな。マンションが売れなくて困ったもんだ」 「あらそうなの?」 「明らかに売れなくなったなー。テレアポしてもガチャ切りが増えた」 「たいへんねぇ。景気わるくなるのかしら」 「わるくなる。投資に値するものが市場からなくなってきた証拠じゃ」 「そうなの?」 「回復まで10年くらいかかるがな。今回のはもう少し短いかもしれん。東京はな」 カランコロンカラーン 「こ!こんばんは!」 「あらけんたくんいらっしゃーい」 「おー起業家。どうした。バイトおわりか?」 「それが…その…」 「どうした?」 「し、師匠!お金かしてください!!!」 「は?」 次号へつづく 【大川弘一(おおかわ・こういち)】 1970年、埼玉県生まれ。経営コンサルタント、ポーカープレイヤー。株式会社まぐまぐ創業者。慶応義塾大学商学部を中退後、酒販コンサルチェーンKLCで学び95年に独立。97年に株式会社まぐまぐを設立後、メールマガジンの配信事業を行う。99年に設立した子会社は日本最短記録(364日)で上場したが、その後10年間あらゆる地雷を踏んづける。 Twitterアカウント https://twitter.com/daiokawa 2011年創刊メルマガ《頻繁》 http://www.mag2.com/m/0001289496.html 「大井戸塾」 http://hilltop.academy/ 井戸実氏とともに運営している起業塾 〈イラスト/松原ひろみ〉
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