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本名を決して他人に明かさない哲学仲間の信念とは?【コラムニスト原田まりる】

 9月30日にダイヤモンド社より『ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。』という自身初の哲学のエンタメ小説が発売される。ニーチェやキルケゴール、ショーペンハウアーやサルトル、ハイデガーなど「実存主義」の哲学者の教えが学べる哲学の教養小説なので、哲学をなんとなく知りたい方や、哲学にあまり興味のない方にも読みやすい内容になっていると思うのでよろしくお願いします。ちなみに略称、ハッシュタグは「♯ニー哲」。 ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。 さて、リリースの取材を受ける時によく聞かれる質問がある。それは「原田さんは普段、哲学の話をする友達はいるんですか?」というもの。最近になって哲学の入門書を書いている著者仲間の友達が増えてきたのだが、一年前までは、哲学のことを一緒に語る友達は一人しかいなかった。そして、妙な感じだが、私はその唯一の哲学友達の本名も年齢も一切知らない。ネットで知り合ったわけではなく友達の紹介で知り合っているのだが、周りの友達も誰一人として彼の本名も年齢も知らない。  彼と10年くらいの付き合いになる友達も誰一人として彼の素性を知らない。これを人に話すと「怖すぎだろ!」と言われるが、彼はものすごく頭が良く、真面目な人格者である。本人によると、前科歴があるわけでも身内に犯罪者がいるわけでもなく、とにかく「自分の情報を人に開示することが死ぬほど嫌だから開示したくない!」という頑ななポリシーがあるとのこと。  しかし、そのポリシーがあるがゆえに折り合いがつかず、抱えている特有の悩みがあるらしい。詳しく聞いてみると「仕事先の人に、自分の素性をどうしても名乗りたくない……」という悩みだった。彼の仕事はプログラマーだ。なので自分で取引先に営業をかけて仕事をとってこなくてはいけないのだが、まず、名刺交換が嫌すぎると言うのだ。  名刺交換では当然自分の名前や連絡先など、素性が明らかになる。それが彼には耐えられない。そこで彼は考えた。考えに考え抜いた結果……「よ」という謎の一文字だけを刷った名刺を作ったのだ。
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名刺は「よ」一文字。彼の持っている哲学とは…?
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ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。

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