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「中国に朝貢せよ」でプチ炎上した外山恒一。その真意は「ほめ殺し」だった!?【1万字インタビュー】

「中国が世界の中心」という建前「だけ」を共有すればいい

――しかしまあ、“中国に朝貢せよ”なんて結論だけを聞くと突飛な妄想に聞こえますし、まさに暴論に聞こえますから、また外山さんがただ面白い思いつきを吹いて回っているだけなのかと実は内心思ってましたが、こうしてじっくりお話をうかがってみると、意外と細部まで詰めて考えてるんですね。あるいは妄想だとしても、“緻密な妄想”という気がします。 外山:朝貢ってそもそも支配―被支配の関係になることではないんです。“中国が世界の中心でございます”っていう建前だけを共有してればよくて、べつに中国に隷属することではない。昔だって例えば日本が中国に使節を送って「貢ぎ物にございます」と何か物珍しいものでも献上すれば、中国は「うむ、苦しゅうない」と言って、宗主国としての威厳を見せつけるためにそれに数倍するような豪華な土産物を持たせて帰すっていう、完全にこっちが得するシステムだったんです。“中国が上”というのは建前だけの話。その建前さえ公式の外交の場で踏み外さなければ、むしろ中国の側がこちらに恩恵を与えてくれる。中国に朝貢しつつ、そういう“正しい朝貢関係”について中国に思い出していただく必要があります。 ――思い出してくれるかなあ。 外山:実はこういうことを言ってるのは私だけではないんです。もちろん私は私で独自に思いついて、“中華主義”を吹聴して回るようになったんですが、例えば5年ほど前に與那覇潤さんという歴史学者が『中国化する日本』(文藝春秋・2011年)という本を書いて、そこそこ売れてたみたいで、読んでみるとやっぱり、中国の勢いはもう止めようがなくて、我々に残された唯一の選択肢は“ほめ殺し”である、というようなことが書いてありました。與那覇さんは私より10歳ぐらい若い新進の学者さんのようですが、一方で日本を代表する知識人であらせられるところのアノ柄谷行人センセイも、こちらは自ら中国に渡って、せっせと“ほめ殺し”を実践されているようです。 ――ホントですか!? 外山:一昨年出た『帝国の構造』(青土社・2014年)という本があって、中国を代表するエリート大学の1つである清華大学で、向こうのエリート学生たちに講義した内容を単行本化したものらしいんですが、“帝国としての正しい振る舞いかた”を宗主国・中国を相手に説教してるような、中国ヨイショ本であると同時にまさに“中国ほめ殺し”本です。共産主義者の柄谷センセイもファシストの私と同じ考えであったか、と心強いかぎりです。 ――今度は柄谷さんをほめ殺してませんか? 外山:滅相もない。衷心から出た言葉でございます。 ――問題のインタビューでは、“中国に金印をもらいたい”って発言もネットでマジレス気味に叩かれてたんですが、あそこはさすがに冗談なんでしょう? 外山:まあ半ば冗談ではありますが……でも記事の地の文の「いまどき中国が金印なんか作ってないだろ」ってツッコミはいかがなものかと思いました。だって90年代に今の天皇が初めて中国を訪問した時に、“金”印かどうかは知らないけど、中国側は天皇に印鑑を渡そうとしたんですよ。 ――マジっすか!? 外山:外務省がバカだから受け取ろうとしたのを、宮内庁が慌てて止めたという話だったと思います。だから中国は今でもやっぱり本質的にそういう国なんです。 ――じゃあ外山さんの“恐ろしいインボー”が成就して、日本が中国との朝貢関係に入ると、中国は天皇に金印を……。 外山:バカなことを言ってはいけません。それこそ本当の愛国者の皆さんに国賊呼ばわりされますよ。中国に臣従するなんていう“汚れ仕事”は俗権の長がやればいいことです。だから陛下ではなく私が金印をもらうと言ってるんです。陛下には“征夷大将軍”に任命していただき、中国には“漢倭奴国王”に任命していただいて、私が両方に臣属すれば陛下の立場は傷つかずに済むじゃないですか。 ――な、なるほど! それならいろいろと波風立たない……いやいや、そんなわけないか(笑)。 外山:でまあ、常々公言しているとおり私は選挙反対で民主主義反対で、いずれ政権を獲る気ですが、選挙で政権を獲るつもりなどさらさらないわけです。今のうちから“中華主義”の立場を公然と掲げて、反中・嫌中に染め上げられた日本にも頼もしい親中派がいて、しかも従来から仕方なく支援してきた古色蒼然たる左翼の親中派と違って、面白路線で一部とはいえ未来を担う若くて優秀な日本人民から熱狂的に支持されてもいるようだ、と中国共産党の視野に入れていただく、と。早いとこ日本人民の総意で我々に中華主義のファシズム政権を樹立させていただかないと日本は大変なことになるんですが、どうせ実際に大変なことにならなきゃ日本人は目を覚まさないんですから、もういっそ大変なことになってしまえばいい。 ――いや、大変なことにならないようにみんな努力してると思うんですが……。 外山:むしろ我々も安倍ちゃんを陰に陽に応援して、もっと調子に乗らせて中国を本気で怒らせてもらって、なんなら稲田朋美とか片山さつきとかが安倍ちゃんを継げば万々歳で、いよいよ戦争になって日本が負けてしまえばいいんです。中国版GHQが日本に進駐してきて、しばらく占領しますが、かつてのソ連のアフガン侵攻も最近のアメリカの対イラク戦争もそうだったように、いまどき敗戦国をいつまでも占領し続けるマヌケな戦勝国はありません。頃合いを見て傀儡政権を作って撤収するのがセオリーです。その時に中国共産党が私を首班指名してくれれば、なにも苦労して武装闘争とかやらなくても、選挙に頼らない政権奪取ができます。もちろん、ただ中国に負ければ日本には最悪の未来が待っているが、その時に我々さえ生き残っていれば安心だ、あとは我々に任せろ、ということでもあります。 ――外患誘致で今すぐ逮捕しろ、とネトウヨが騒いでました。 外山:私はニヤニヤしながら黙って自民党政府を支持していくつもりなのに、それのどこが外患誘致ですか? 私は、中華主義に賛同してくれるマジメな愛国者たちを我がファシスト党にコツコツと組織して準備万端ととのえる以外はとくに何もせず、ただそれが活かされる日本敗戦の日を今か今かと夢に見ながら待機するだけです。外患を誘致する国賊の役目は、私ではなく、安倍ちゃんとそのお仲間の皆さんにお任せしますよ。
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中国化する日本

ポップにして真摯、大胆にして正統的、ライブ感あふれる、「役に立つ日本史」


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