ビッチと罵られサークルから追い出される女【サークルクラッシュ事件ファイル①】

 一人の異性を巡る恋愛によって、集団の人間関係が悪化する現象を「サークルクラッシュ」という。誰もが「あ〜いるいる、そういう女」と思い当たる、青春ドラマにはおなじみの設定だが、そんな「サークルクラッシュ」現象を大真面目に研究している同好会が京都大学に存在する。代表が「現代社会の病理」とまで主張する、この現象の背景と問題点とは何か? 短期集中連載、第2回。

サークルクラッシュ

※写真はイメージです

サークルクラッシュ研究~第2回~


 前回はサークルクラッシュの3要素として①特殊な集団、②クラッシャー、③クラッシャられがあることを示し、その恋愛は極めてミスマッチな関係であると述べた。しかし、そのようなミスマッチは実際にはどのように起こっているのか。具体的なイメージを持ってもらうために、今回は事例を紹介したい。

 なお、以下の事例は、筆者が取材・体験してきたサークルクラッシュの事例のいくつかを組み合わせ、分かりやすく再構成したものである。

―――――
【登場人物】新入生の女・加奈子、新入生の男・高橋、先輩の佐竹、先輩の仲元

2012年5月18日(金)「あるオタクサークルの新歓コンパにて」

 ある大学のオタクサークル(「げんしけん」をイメージしてもらえば分かりやすいかもしれない)では、新しくサークルに入る新入生を歓迎し、新歓コンパ(飲み会)を開いていた。サークルのみんながワイワイ騒いでいる中、新入生の男、高橋は話題もなく、話せずにいた。一人ポツンと取り残されたような感覚。大勢の場で馴染めないことに、高橋はもはや慣れてしまっているのだが……。

 そこに新入生の加奈子が話しかけてきた。加奈子は低身長で長い黒髪の、清楚に見える女の子だった。

「アイマス好きなんですかー?」

 高橋はびっくりしたが、自分がカバンにキャラクターのストラップをつけていたことを思い出す。「あ……うん」 反応が遅れながらも答える。「私も好きなんですよ! 誰が好きですか? 私は千早が好きで……」 加奈子はそんな反応にお構いなしという感じで、楽しそうに高橋と話をした。オタク趣味にもかかわらず気兼ねなく話せる加奈子に、高橋は好感を持った。


 このように、集団の中でも疎外感をおぼえやすい、いわゆる「コミュ障」的な男(クラッシャられ)はクラッシャーと結びつきやすい。加奈子としては誰にでも話しかけているだけなのだが、その後、高橋は加奈子に対して積極的にコミュニケーションを取るようになる。高橋はTwitter上で加奈子のツイートをお気に入りにしたり、頻繁にリプライを飛ばしたりする。加奈子はそんな状況に気持ち良さをおぼえる。

 高橋の方は「コミュ障オタク」である自分に壁を作らずに話しかけてくれる加奈子に惹かれ、自分の理想を投影してしまう。「他の女は僕を虐げてきたけど、この子は違うんだ」というミソジニー(女性嫌悪)が根底にあることも多い。一方、加奈子の方は、自分の承認欲求を満たしてくれる男に対して「エサを与える」のである。この時点ではまだある種のwin-winな関係性が成立してしまっている。

 しかし、新歓コンパのあった5月18日。二次会の際にサークルクラッシュの種は既に蒔かれていた。

5月18日(金)「新歓コンパの二次会にて」

 一次会で帰った加奈子について、サークルの「先輩」たちの間で話題になっていた。「新入生のあの子かわいいよな」「けど、ちょっとあざとくね?」「俺、あの子行っていい?」……などといった風に。その中で加奈子を狙う先輩、佐竹は恋愛経験がないわけではなかったが、そのとき彼女はいなかった。佐竹は一次会で帰った加奈子に対してメールを送った。

「今日は来てくれてありがとう! またサークルの定例会にも来てね」


 佐竹の方は高橋と違い、どちらかと言えば「チャラい」先輩だった。その後、佐竹はサークルの何人かで遊びに行く際に加奈子を誘った。また大学の学園祭でイベントをする際、備品購入を名目に二人で出かけるなどしていた。

 しかし、加奈子はサークルで過ごす中で、仲元という先輩を好きになっていった。仲元はサークル内で中心的な立場の男だった。加奈子は、自分がサークルの男たちから一目置かれていることに半ば気づいており、その状況を楽しんでいた。ある男は楽しそうに加奈子に話しかけてくる。また、女性と話すことに慣れない男は加奈子が話しかけるとドギマギした様子で、何かよく分からない部分を褒めてくれる。高橋もそんな一人だった。しかし、加奈子以外の女子部員は男にチヤホヤされる加奈子を疎ましく思っていた。

 実際、クラッシャーは女性からは孤立することが多い。というのは、男にチヤホヤされるからだ。それは女性から嫉妬されるというよりもむしろ、「チヤホヤされるための行動を取っている」という「ぶりっ子」的な行動への嫌悪感である。また、クラッシャー自身も女性同士でよくある「合わせる」コミュニケーションが苦手で、そのため男といる方がラクということは多い。

 さて、大学の前期が終わり、夏休みに差し掛かる頃。サークルクラッシュは佳境を迎える。

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