お金

カモ専用の入金督促特設会場――連続投資小説「おかねのかみさま」

「まぁまぁ。えーと、ところで健太くん、さっきバイナリーオプションのソフトのせいで追証払わないといけないって言ってたね?」 「はい…明後日までに…」 「ふむ。ちょっとその画面みせてみ」 「はい…こちらです」 「ふんふん。ふん。ふーん。ほー。あー、やっぱりねーー」 「な、なんですか?」 「健太くん。これ払わなくていい」 「え????」 「あのね健太くん、バイナリオプションは初心者向けに非常に簡素化された投資行為で、馬鹿でもできる丁半博打みたいな投資なんじゃが、不足金の入金や追証を払い込むということは一切ないんじゃ。ほれ、ここよく見てみ」 「ここですか…?バイナリ…おぷしょん?」 「いや、もっとよく見てみ」 「!!!!!パイナリ!!!バイナリじゃなくてパイナリって書いてある!!!」 「そうじゃな。このサイトは、君みたいに追い込まれるとすぐに『グェ』って言うカモ向けに作られた、入金督促特設会場じゃ」 「と…特設会場…」 「そう。つまり、君みたいなカモを追い込んだらなんとかかき集めて払ってくれそうな金額を表示してるだけの画面じゃ。確認もせず、焦らされたら言われた通りにグェグェ言いながら払い込む連中のための画面じゃ」 「はー…」 「学長すごい。なんかドラマみたい」 「ぬふふふふふふ」 「で、でも、僕これ払わなかったらなんか怖い人たちが家庭訪問に来たりしませんか?」 「あるかもねー」 「いやぁですよぉおおぉお…」 「見に行く。なぁママ」 「楽しみね。缶チューハイ持って見に行くわ」 「ま、だいじょぶじゃろ。ここまでわかりやすいワナ作ってるところは自分たちも目立ったら捕まるからな。なんか言ってきたら『金融庁に報告します』と伝えといたらいい」 「は、はい…」 「と、いうことで、健太くん、お金いらなくなったね」 「ありがとうございます…ほんとになんとお礼をしたらいいやら…」 「いやいやお礼なんて、そんな、いいんじゃよ。毎月1万円ずつの支払い、がんばってな」 「え!!!!???」 次号へつづく 【大川弘一(おおかわ・こういち)】 1970年、埼玉県生まれ。経営コンサルタント、ポーカープレイヤー。株式会社まぐまぐ創業者。慶応義塾大学商学部を中退後、酒販コンサルチェーンKLCで学び95年に独立。97年に株式会社まぐまぐを設立後、メールマガジンの配信事業を行う。99年に設立した子会社は日本最短記録(364日)で上場したが、その後10年間あらゆる地雷を踏んづける。 Twitterアカウント https://twitter.com/daiokawa 2011年創刊メルマガ《頻繁》 http://www.mag2.com/m/0001289496.html 「大井戸塾」 http://hilltop.academy/ 井戸実氏とともに運営している起業塾 〈イラスト/松原ひろみ〉
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