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「つらたん」を連呼…30代以降の言葉のチョイスは時に場を白けさせる【コラムニスト原田まりる】

 あまり自分では自覚したくないのだが、30代になってから明らかに衰えたと感じるものがある。それは、「チョイスする言葉」である。これは10代20代の時と比べ語彙力が衰えたという意味ではなく、「今時の言葉」に明らかに疎くなってしまったという意味である。  先日、「ビリギャル」の著者である坪田先生と対談させていただいたのだが、その際に「この本はいたるところにギャグが詰まっています」と自著に関してコメントしたところ、坪田先生に「ギャグって(笑)。今の人はネタやジョークと言いますよ」と指摘を受けてしまった。やはり高校生と多く接する機会のある方からみても、チョイスする言葉が古く聞こえたようであった。  しかし、このように「チョイスする言葉のおっさん・おばさん化」に危機感をもっているのは私だけではないようである。というのも先日このようなことがあった。古くからの友人男性たちと5人で焼き鳥を食べに行く機会があった。友人は広告代理店で働いており私よりも7歳年上であるが、非常に若々しく見える。また、当日やってきた人達も皆若々しく、中でも一人絵に描いたような「意識高い」男性が参加していた。 焼き鳥 グロッシーな黒髪パーマに、ジョンレノンメガネ、ジミーチュウの靴と三拍子そろった男性だったが、この男性はなにかに追い立てられるように異常にある一言を乱用するのだった。  その一言とは「つらたん」である。一応説明しておくと「つらたん」とは、辛いという言葉の進化系で、10代~20代前半の若者中で流行ったネットスラングである。「期末マジ、つらたん」「金欠、つらたん」といった具合に使用されるのだが、この男性はなにかに取り憑かれたように「つらたん」「マジつらたん」と繰り返すのだ。間隔にして30秒に1度。まるで30秒おきに「つらたん」と言わなければ、身内に死が訪れる呪いにでもかかっているかのように……執拗に「つらたん」を繰り返す。  当然、なんの文脈もなく「つらたん」だけを口しても会話にならない。なので、この男性は「つらたん」と「つらたん」の間の30秒の間隔をどうにかして、「つらたん」と言える方向をもっていくためのゲームメイクを仕掛けるのだ。  ちょうどその時、店内に設置されたテレビでは売れてる芸人の最高月収を告白するという特集が流れていたのだが、誰かが「儲かってるなー」というコメントをした途端「けど、こんな電波の情報全部嘘かもしれない。この世界は洗脳だらけ。つらたん。」と話の腰を折って無理やり「つらたん」をぶっこんでくるのだ。
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