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「ちんちくりんの中年がモテるわけがない」――46歳のバツイチおじさんは南インドの楽園でとても卑屈になった〈第31話〉

翌朝、俺もバックウォーターツアーに参加した。 この宿からツアーに参加するのは俺だけのようだ。 もしかしたらあの老紳士のように楽しいハプニングが起きるかも……。 そんなやましい気持ち1000%を胸に秘め、3時間かけてミニバンでアレッピーの水郷地帯に向かった。 船は10人乗り程度の小舟で、船乗りが舵を切り、共に旅をする水先案内人となった。 一緒に乗るメンバーは、イギリス人の初老の男性一名とオーストラリア人の白人女性だった。

南インドの水郷地帯に広がるアレッピーのバックウォーターツアー

白人女性の名前はケリー。オーストラリアのジャーナリストでアメリカやオーストラリアのカルチャー雑誌にコラムを書いている作家だ。 インドを旅しながらインド人の結婚観についての記事を書いているらしい。
「ちんちくりんの中年がモテるわけがない」――46歳のバツイチおじさんは南インドの楽園でとても卑屈になった

オーストラリア人のケリー。ジャーナリストらしく、写真をバシバシ撮っていた

ケリー「あなたも記事を書いてるの?」 俺「うん。旅出る前に離婚しちゃったのね。で、世界一周花嫁探しというタイトルで記事を書いてるんだよね」 ケリー「ははは、面白いね。今度、記事見せてよ」 俺「後でURL送るよ」 バックウォーターツアーはヤシの木の間の静かな河川を6時間ほどかけ、ゆっくりと下る。途中、スパイスの森という浮島に降り、そこで生活する人の家にお邪魔し、ケララ州スタイルの昼ご飯をいただく。バナナの葉っぱの上に盛られたべジタリアンカレーだ。

ケララ州のベジタリアン料理。バナナの葉っぱがお皿代わり

俺「何これ、この野菜カレー、死ぬほど美味い! ケリー、これ倒れるほど美味いよ」 ケリー「ふふふ(笑)。これ、南インドの一般的な料理よ」 俺「ほんとに感動した」 小さい頃から野菜嫌い。カブトムシの餌の味がするという理由でキュウリが食べられなかった。しかし、こんなおいしい野菜がこの世の中にあるなんて! 俺「おかわりいいですか?」 出された野菜料理を一粒残らず食べた。 バナナの葉っぱはスパイスの森に返された。 エコだ。 「これが究極のオーガニックスタイルか!」 俺は感動で小さく魂が震えた。 夕方になり、半日のバックウォーターツアーが終わった。 ケリー「ごっつ、フェイスブックやってる?」 俺「やってるよ」 ケリー「交換しようよ。記事のURL送って!」 お~! 初めて女性からフェイスブックの交換を申し出てきた。しかも、白人女性。 二人は連絡先を交換し、各々の宿に戻った。 コーチンの有名な観光スポットはほぼほぼ行ったので、そろそろ次の場所に移る計画を立てる。 ここより南にある観光地をロンリープラネットで調べると、バルカラビーチという場所が欧米人に人気があるようだ。 ネット情報によると、南インド最高のビーチとも書いてある。 南インドの楽園ビーチに寝そべるパツキン女性。 もしかしてトップレスかもしれない。 レスなのはトップだけではないのかもしれない。 バルカラビーチっていう名前もピーターバラカンみたいでいい。 俺、ピーターバラカン大好きだし。 とにかく名前が気に入った。 よし、バルカラビーチに行こう! 俺「オーナー、急でごめん。俺、今日、宿出るわ」 オーナー「えー! まじか。もう一泊しろよ」 俺「うーん。でも、この辺の観光は大体終わったし」 オーナー「もう一泊しろって。秘密の情報教えるから。今夜、お前の隣の部屋にフランス人の可愛い女の子が一人で泊まるぞ。もう一人、20代の韓国人の女の子も泊まる予定だよ。たぶん可愛いぞ~。キキキキキキキキキーー」 こいつ、俺のスケベ根性を完全に見抜いている。 確かにフランス美女とジュテームな夜は魅力的だ。 韓国美女とアニョハセヨもいい。 このまま残ろうか? 旅を続けるべきか? まだ見ぬフランス美女や韓国美女とビーチに寝そべる白人美女のトップレス、どっちがいい? 「やっぱり水着姿の金髪美女かなあ……キキキキキキキキキキーーーー!」 俺は心の中でブキミな笑いを浮かべ、スケベ根性全開でよりいやらしい方向に舵を切った。 俺「オーナー、悪い。俺は旅を続けなきゃいけないんだ」 スケベ根性はひた隠しにし、ちょっとカッコつけてそう言い放った。すると――。 オーナー「バルカラビーチで金髪美女の水着が見たいんだろう? キキキキッ? あそこはいいぞ~。美女が集まるビーチだよウキキキキキキキキッ!」 だめだ。 完全に見抜かれてた。
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金髪美女とビーチで寝そべるため、バルカラビーチへ
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