ニュース

ドゥテルテフィーバー現地報告 フィリピン人は外交政策に関心薄?

 ドゥテルテ大統領が強硬に進める麻薬撲滅戦争では、政権発足からの4か月間で約4000人が死亡したと報じられている。国際社会から非難の集中砲火を浴びる中、10月上旬に行われた世論調査では、麻薬撲滅戦争に「賛成」と答えた国民は84%に上った。ただし、「容疑者を生きたまま逮捕すべき」との回答は93%で、ほぼ全員が殺害というやり方には否定的だった。  警察による殺害がこのまま続けば、国際世論だけでなく国内からも反発の声が高まるのは必至だ。治安当局も現在、殺害という手段ではなく、逮捕という司法手続きに沿った取り締まり強化へと路線を変更しつつある。  政権発足以来、維持してきた高支持率も麻薬撲滅戦争だけではやがて陰りが見えてくるだろう。ドゥテルテ大統領が他に模索中の施策は、マニラ首都圏における渋滞緩和だ。経済的損失は1日当たり30億ペソ(約63億円)に上るほど深刻で、現在、問題解消に向けて大統領に非常大権を付与するか否かが国会で議論されている。  このほか汚職や雇用創出、貧富の格差、ミンダナオ和平など国内における課題は山積みだ。訪日を終えたドゥテルテ大統領はそろそろ国際社会に向けた暴言を控え、麻薬撲滅戦争以外の国内問題へシフトしなければならないだろう。とはいえ日本のお盆に当たる万聖節(11月1日)を終えるとフィリピン国内は一気にクリスマスムードに包まれる。国民の8割以上がキリスト教徒のこの国にとって、年間通じて最も重要な行事だ。次に「ドゥテルテ節」を耳にするのは年越し以降かもしれない。 <文/水谷竹秀> 【水谷竹秀】 1975年、三重県生まれ。上智大学卒。新聞記者などを経てフリーになり、現在はフィリピンを拠点に活動。2011年に『日本を捨てた男たち』で開高健ノンフィクション賞を受賞。近著に『脱出老人 フィリピン移住に最後の人生を賭ける日本人たち
1
2
3
日本を捨てた男たち

「困窮邦人」の実態を徹底的にあぶり出す渾身のノンフィクション


脱出老人 フィリピン移住に最後の人生を賭ける日本人たち

幸せな最期を求めて「脱出」というアクションを起こした高齢者たちの衝撃ルポルタージュ。

おすすめ記事