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空手は「寸止めか、フルコンか?」論争が勃発。フルコン“国内無差別級最強”決定戦を観に行ってみた

女子決勝――元世界チャンピオンが完全復活!

 無差別級の全日本大会は昭和44(1969)年に第1回大会が開催されて以来、長らく男たちだけの戦いだった。女子の部ができたのは、平成18(2006)年の第38回大会からである。  だが、「しょせん女子のフルコンなんて」と侮るなかれ。生で見れば分かるが、一般の男性ならぶっ飛ばされてしまうくらいの威力である。  女子の決勝に勝ち進んだのは、第46回大会準優勝、昨年の第11回全世界大会でも4位の成績を収めた18歳の菊川結衣選手(芦原会館)。身長148センチながら闘志溢れるファイトスタイルで、自分より大きな選手たちをなぎ倒し、決勝まで上がってきた。  迎え撃つは、第10回世界大会王者で、全日本大会も過去3回制した実力者、将口恵美選手(愛知山本道場)。近年はケガにも泣かされ、一度引退を決意しながらも現役続行を選び、本大会に臨んだ。
フルコン

下段廻し蹴りを決める将口選手(右)(主催者提供)

 菊川選手は小柄ながら全体重を乗せた渾身の打ち下ろしの突きを武器に、前へ前へアグレッシブに攻め続けて強敵を退けてきた。だが、決勝で将口選手は、菊川選手の打ち下ろしに肩口を狙って突きを合わせていった。これを菊川選手が嫌がり、思うように前に出切れない。将口選手はこの作戦について、試合後、次のように語ってくれた。 「菊川選手は打ち下ろしを打ってくる選手で、それに対して、対戦相手は下突きで応じていました。自分も以前、菊川選手と対戦したときは、やはりボディを攻めたんですけど、すごい根性のある選手なんで、それでもすごい打ってくるんです。だから今回は、打ってくる打ち下ろしに合わせて肩口に突きを合わせる方法を閃いたんです。ただ、閃いたものの、練習していないので、実際の本番でできるかどうか分からなかったんですけど、うまくいきました。菊川選手の試合を見ていると、他の選手たちは菊川選手の打ち下ろしに対して上から合わせても、顔面に入ってしまい、反則を取られることが見られましたが、自分はコントロールが結構良い方なので、反則を取られることを気にせずに積極的に打ちました」  勢いの落ちた菊川選手に、将口選手は的確に突きと下段蹴りを打ち込み、見事チャンピオンに返り咲いた。  将口選手は今大会を振り返って、次のように語ってくれた。 「この前の世界大会が終わった後、一度引退を決めたのですが、周りの方々からの励ましもあり、現役続行を決意しました。その時に気持ちがすごくリセットされて、新たな自分という感じで臨めたのが、今までの試合とは全く違う部分かなと思います。決勝もなんですけど、今大会は全試合を通して、いつもだったらプレッシャーや緊張もあり、また、アグレッシブに攻めてくる相手に対して、自分もカッとなってそれに応じてしまうことなどがあったんですけど、そういうのをやめて、平常心で試合に臨むというのを一番の目標にしました。実は決勝戦の菊川選手の対策は、試合直前にトイレの前で思いついたんです(笑)」
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男子決勝では“怪物”が初の頂点へ
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