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空手は「寸止めか、フルコンか?」論争が勃発。フルコン“国内無差別級最強”決定戦を観に行ってみた

男子決勝――“怪物”が初の頂点へ

 そして、男子の決勝は、第11回世界大会優勝の島本雄二選手(広島支部)と、その島本選手に決勝で敗れた入来建武選手(東京城南川崎支部)の優勝候補同士の戦いとなった。島本選手の連覇なるか、入来選手がリベンジを果たし初優勝なるか、という注目の一戦だった。  決勝戦の前には入来選手の父であり支部長でもある入来武久師範による特別演武が行われた。束ねた3本のバットを下段蹴り一閃で叩き折り、7段に積まれた1本の厚さが15センチの氷柱に、気合もろとも手刀を打ち下ろし、6段の氷柱を真っ二つに砕き割り、会場から大歓声が沸いた。この演武をバックヤードのライブ中継で見ていた入来選手は、割れずに残った氷柱を見て、「あと1本分頑張れば勝てる」と気合を入れ直した。  島本選手には過去に一度も勝っていない入来選手だったが、この決勝戦では1年前の雪辱を晴らすべく、充実した試合運びを展開した。島本選手の強力な突きや蹴りをギリギリで見切って受けながら、下段回し蹴りからの中段突きを的確に返していった。
フルコン

正拳突きを放つ入来選手(右)(主催者提供)

 前回取材した第5回世界チャンピオンの緑健児氏は、試合中、道着が乱れることが少なく、それを見た故大山倍達総裁は、「防御がうまい」と評価したという。同じく入来選手も道着が乱れることが少なく、受けのうまさを証明していた。  だが、もちろん受けだけではない。入来選手の真骨頂は試合後半の猛ラッシュだ。終盤に差し掛かると一転、間合いを詰め、膝蹴りを軸に猛ラッシュをかけ、島本選手を圧倒。5-0の判定で見事、初優勝を果たした。  敗れた島本選手は試合後、「1年前の入来選手と今回の入来選手はぜんぜん違った。格段に強くなっていた」と述べた。  入来選手は、「一番はやっぱり『絶対優勝する!』という気持ちが、今回は最後までしっかり持てたことだと思います」と勝因を語った。 「攻撃をもらいすぎず、受けと返しをしっかりとやって、最後にしっかりと攻めて行くという、そういうファイトスタイルをイメージしています。自分は下段蹴りが得意なので、しっかり稽古して蹴り方に磨きをかけることができました。本当は最後に攻めて倒せるようにしたいんですけど、まだまだちょっと力不足です」  今大会の優勝者らは、来年7月にカザフスタンで開催される第6回全世界ウエイト制空手道選手権大会の日本代表選手団として選出される。入来選手は来年の大会に向けて、「長いこと海外勢に優勝を取られているので、今度こそボクが優勝できるように頑張ります」と抱負を語った。  こうして二日間の熱い戦いは幕を閉じた。  今大会を終えて、新極真会代表の緑健児氏は、「大会は大成功のうちに終わった。今回、選手たちを何としても満員の観客の中で戦わせてやりたいという思いがあった。私たち支部長と後援会のみなさま、またスポンサー各社のみなさまの心がひとつになって、あのような素晴らしい大会ができたと思います。心から御礼申し上げます」と述べた。  大会とは、選手たちはもちろんだが、選手たちを支える多くの人たちの協力もあって成り立っている。ここに、本当のアスリート・ファーストのひとつの理想形を見た思いだった。  この大会の模様は、11月6日(日)16:00~17:15テレビ東京系列全国6局ネットで放映される。フルコンタクト空手がどのようなものか、今まで試合を観たことのない方も、また往年の空手ファンも、この機会にあらためて観てみてはいかがだろうか。 取材・文/育鵬社・山下徹
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