80年代ラブコメの金字塔『めぞん一刻』 聖なる酔っぱらいの告白――南信長のマンガ酒(1杯目)

 マンガの中で登場人物たちがうまそうに酒を飲むシーンを見て、「一緒に飲みたい!」と思ったことのある人は少なくないだろう。『まんが道』のチューダーのように一度は飲んでみたい酒、『あぶさん』の「大虎」のように一度は行ってみたい酒場もある。酒の嗜好がキャラの特徴となっているケースも多々あるし、酒を酌み交わすことで親子や仲間の絆を深めたり、酔っぱらって大失敗、酔った勢いで告白(あるいはベッドイン)など、ドラマの小道具としても酒が果たす役割は大きい。

 当コラムでは、そんなマンガの中の印象的な“酒のシーン”をピックアップし、そのシーンと作品の魅力について語る。酒好きな方はもちろん、そうでない方も、酒とマンガのおいしい関係に酔いしれていただきたい。

 記念すべき1杯目は、あの’80年代ラブコメの金字塔だ。

【1杯目】高橋留美子『めぞん一刻』◎聖なる酔っぱらいの告白


「1月は正月で酒が飲めるぞ」に始まり、何かと理由をつけて「酒が飲める飲めるぞ 酒が飲めるぞ」と歌い上げる『日本全国酒飲み音頭』(作詞/岡本圭司・作曲/ベートーベン鈴木・唄/バラクーダ)。昭和末期ののんべえにとっては聖歌もしくは国歌とでも呼ぶべき1979年末リリースのヒット曲だ。

 まさしくこの歌のように、何かというと酒盛りを始め、所構わずどんちゃん騒ぎを繰り広げていたのが高橋留美子『めぞん一刻』の登場人物たちである。首謀者はだいたい決まっていて、酒豪主婦・一の瀬のおばさん、謎の男・四谷、スナック勤めの朱美の3人だ。

 何しろ第1話から早くも宴会が始まる【図1】。名目は、一の瀬のおばさんたちが住む古い下宿屋「一刻館」にやってきた新しい管理人の歓迎会。その管理人こそ、マンガ史上に燦然と輝く難攻不落のヒロイン・響子さんである(つい「さん」付けしてしまう)。

図1「めぞん一刻」1巻p19

【図1】『めぞん一刻』1巻P19より。(c)高橋留美子/小学館

 会場となるのは、同じく「一刻館」に住む浪人生・五代裕作の部屋。四谷たちに勉強の邪魔ばかりされ、「こんな所にいたらぼくの一生はメチャクチャだ!!」と出ていこうとしたところに現れた響子さんに一目惚れして前言撤回。明日は模試だというのに自分の部屋でどんちゃん騒ぎされるのを断り切れない優柔不断さが、その後の彼の迷走人生を予感させる(ちなみに翌日の模試は寝過ごして遅刻)。

次ページ第3話はクリスマスのエピソード

めぞん一刻 (1)

「一刻館」の住人と美人管理人の間で巻き起こる爆笑ラブ・ストーリー


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