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「同じ時間を過ごすことが仲間の証明」という日本文化と、過労死の問題【鴻上尚史】

― 週刊SPA!連載「ドン・キホーテのピアス」<文/鴻上尚史> ― ドン・キホーテのピアス イギリスでイギリス人相手に芝居をした時、千秋楽にオフィシャルな「打ち上げ」がないことに驚きました。一か月必死で稽古して、一か月苦労を共にした本番を過ごしたのに、最後の日、普通に終わるのです。  もちろん、飲みたい奴は飲みます。僕は俳優と共に深夜まで飲みました。  でも、参加したくない奴は参加しません。それは、「共に時間を過ごすこと」を強制しない文化だからです。  僕は繰り返し「世間」と「社会」の違いについて書いています。  「世間」の特徴のひとつは、「共通の時間意識」というものです。つまりは、「私とあなたは同じ時間を生きている」というものです。  ちゃんとした会社に電話すると、相手の人は「いつもお世話になってます」と言います。相手が誰だろうが、関係なく、機械的に言います。  僕は初めての会社の時は、こう言われると、「いえ、電話するのは初めてで、お世話になるかどうかは、これからの話次第です」と答えます。たいてい、電話の相手は、「危ないクレーマーの電話だ」と思うようで、態度が急変します。
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「先週はごちそうさまでした」日本と欧米では異なる解釈
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※「ドン・キホーテのピアス」は週刊SPA!にて好評連載中

この世界はあなたが思うよりはるかに広い

本連載をまとめた「ドン・キホーテのピアス」第17巻。鴻上による、この国のゆるやかな、でも確実な変化の記録

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