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恋人に何度も首を絞められた男が知った真実の愛――爪切男のタクシー×ハンター【第十二話】

家に帰った私は、睡眠薬でスヤスヤと眠っている彼女に頭を下げて、今までの非礼を詫びた。そしてスタンプカードのご褒美を二人で楽しめるものに改めた。首を十回絞められたら豪華な食事、三十回絞められたら遊園地デート、五十回絞められたら温泉旅行。確かにこの特典の方が何倍も素敵じゃないか。さぁ、明日も私の首を絞めるがいい。これから先も好きなだけ首を絞めるがいい。お前が私の首を絞めれば絞めるほど二人の素敵な思い出ができるのだから。お前の首絞めなんかで壊れない強い首を持った男に私はなってみせる。そうか……相手に対する無償の気持ち……これが愛というものなのか。やっと愛が分かった。 彼女に対する私の気持ちが恋から愛に変わった夜、気持ち良さそうに寝息を立てる彼女の横で、ブリッジで己の首を鍛え始めた私の姿がそこにあった。愛はここにある。 文/爪 切男 ’79年生まれ。会社員。ブログ「小野真弓と今年中にラウンドワンに行きたい」が人気。犬が好き。 https://twitter.com/tsumekiriman イラスト/ポテチ光秀 ’85年生まれ。漫画家。「オモコロ」で「有刺鉄線ミカワ」など連載中。鳥が好き。 https://twitter.com/pote_mitsu ※さまざまなタクシー運転手との出会いと別れを繰り返し、その密室での刹那のやりとりから学んだことを綴ってきた当連載『タクシー×ハンター』がついに書籍化。タクシー運転手とのエピソードを大幅にカットし、“新宿で唾を売る女”アスカとの同棲生活を軸にひとつの物語として再構築した青春私小説『死にたい夜にかぎって』が好評発売中
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死にたい夜にかぎって

もの悲しくもユーモア溢れる文体で実体験を綴る“野良の偉才”、己の辱を晒してついにデビュー!

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