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女がイラッとする「余計な一言」を男が止められないワケ【カリスマ男の娘・大島薫】

 見た目は美女でも心は男――。「カリスマ男の娘」として人気を博し、過去には男性なのに女優としてAVデビューを果たした大島薫。女性の格好をしたまま暮らす“彼”だからこそ覗ける、世の中のヘンテコな部分とは?  どうしてこうも男性は“距離感”を知らない人が多いのか。

友人の木村えりさんと著者

 先日、友人の木村えりちゃんの舞台を観に行った。えりちゃんと知り合ったのは、秋葉原のアイドル喫茶店「バックステージパス」だ。当時えりちゃんはアイドルとして在籍しており、ボクはまだ現役のAV女優だった。そんな立場の違いがありながらも、仲良くしてくれていたえりちゃんは、彼女がアイドルを辞めたあとも、互いに互いの活動を応援しあう仲を続けられている。  そういえば、ボクはわりとアイドルの知り合いが多い。元でいえばAKB48の小野恵令奈ちゃんや、BILLIE IDLE(R)のファーストサマーウイカちゃんなどとも交流がある。昨今アイドルビジネスも増え、地下アイドルまで含めればその数は膨大だ。基本的に男性ファンを相手にする彼女たちを見ていると、男性は女性との距離感がわかっていない人が多いなとつくづく感じる。 「ツイッターなんかのリプライでも、なんでこんなメッセージ送ってきたの? って頭を抱えるようなコメント山ほど来るよ」  アイドル活動をやっている子からこういう話を聞くことは少なくない。 「この前なんか写メをアップしたら『この太い足がイイですね』なんてコメントが来て、そんなの言わなくていいから!って思ったよ(笑)」  たしかに。ただ褒めるだけなら「足がイイですね」だけで良かったはずだ。どうして余計な一言を足したがるのだろう。こういうことはアイドルに限らず、職場の男性上司と女性部下なんかでもよく聞くエピソードだ。

女性の自虐的なセリフに対する男女の返し方の違い

 最近つい1月ごろにもそういえば、男性が距離感を見誤って起こした事件があった。「ロリコンストーカー医師」などの俗称で報じられた、金沢の男性医師が女子高生へのストーカー容疑で逮捕されたニュースだ。男性のツイッターなどでは「〇〇ちゃん(女子高生の名前)は僕のお嫁さんだよ」といった書き込みが頻繁に見つかった。  別にストーカー事件を起こすのは男性に限った話ではないが、この件は実に男性らしい暴走の仕方だなと個人的に思う(多少突飛なケースだとしても)。  女装生活を初めて間もないころ、女性同士の会話に驚かされたことがあった。  ある女性の知人が、こんなことを言ったときのこと。 「私、あんまり気遣いとかできないから……」  なんてことはない。よくある自虐的なセリフだ。だから、ボクはすかさずこう言った。 「〇〇ちゃん“意外”と気遣いできてると思うよ」  それにピクリと反応したのは別の女友だち。彼女はボクの言葉のあとに続ける。 「〇〇ちゃんは“結構”気遣いできてると思うな」  そのときボクは単純に何を言っているのだろうと思った。この知人女性は自分が「気遣いができない」と嘆いて反省しているのだから、「そんなに落ち込むことはないよ」と言うのであれば、最初に付ける言葉は「意外」が適切だ。「結構」では彼女の反省は勘違いだと言っているようなもので、それでは文脈が繋がらないじゃないか。  だが、あとになって気付いた。彼女にとって欲しかった言葉というのは、むしろ女友だちの言った言葉だったのではないのか、と。つまるところ、視点の違いだなと思う。  ボクは彼女が放った自虐の言葉に、自分の目線からある種「ボクも君は気遣いができないと思うよ」と同意してしまっていることにはならないだろうか。もし、仮にこの女性が「慰めの言葉」を欲していたのだとすれば、「そんな風に周りから言われるかもしれないけど、結構気遣いできてるほうじゃん」という意味合いを含んだ女友だちの言葉のほうが正しかったのではないか。これが女性として生きてきた人の視点なのかと感じたのだ。  ボクはあくまでボク自身の視点にしか立たなかったが、女友だちは悩んでいる彼女から見た《彼女の視点》に立っていた。
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男性は「自分の立場」をどうしても優先しがち
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