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自衛隊員が制服を着て通勤できないワケ

「自衛隊ができない30のこと 02」

自衛隊員は制服を着て通勤できない?

陸上自衛隊HPより引用

 春です。自衛隊の教育隊がある各地では自衛隊に入りたての学生が初めての休みをもらって集団で歩いている姿を見かけます。普段は教育隊のなかで一分一秒の時間まで決められ、次々と予定をこなし、忙しい毎日のなかでやっともらえた休みなのでしょう。これまで住んでいた場所から遠く離れての集団生活、見慣れない町を迷いながら必要なものを買いそろえる姿が見られます。  海上自衛隊の教育隊では外出にその新入隊員の自衛隊への所属をきちんと示すために制服を義務づけているところが多いようで教育隊周辺の町ではセーラー服の新人隊員を見ることができます。陸上自衛隊では最初の一回だけ班長が引率するだけで最初から私服での外出のようです。ほかの駐屯地周辺ではかなりの数の自衛隊員がいても基地の外ではなかなか制服を着ている姿を見ることありません。たまに電車のなかで見かけたり、高速道路で見かけたりすると、珍しいなぁと感じるくらいです。  しかし、自衛隊は制服で出勤も可能なのです。自衛隊に好意的な町では制服での出勤も見られるようですが、都心ではほとんどそういった風景は見られません。制服の自衛官はそもそも目立つのでその一挙手一投足が注目を浴びます。規律正しい自衛隊というイメージを損なわないために、たとえば電車のなかでも席に座らない。立ち食いなどイメージのよくないことはできなくなります。自由度が下がります。  単純にかっこ悪いだけでなく、それが通報されることもあります。  制服を着ていると監視されてしまうわけです。とくに自衛隊は自衛隊が嫌いな人たちにとっては目の上のたんこぶですから、少しでも問題があれば通報されます。疲れたサラリーマンは電車のなかで本気で眠りこけていますが、それを制服姿の自衛官がやれば、写メをとられて「ネットの祭り」になってしまうわけです。  そういったことが起こらないように、特別に気を付けて行動しなければならないので、制服で通勤する人は少ないのです。  自衛隊は制服で街のなかを普通に歩くようになれば、多くの人が自衛隊を身近に感じることができ、さらに理解が深まるのではという意見がありますが、まだまだハードルが高いのです。外国の軍人が軍服で酒を飲んでいたり、パーティで大騒ぎしたりしている様子が映画にでてきますが、同じことを自衛隊がやったら大変です。自衛隊員が制服で遊んでいると通報されるわけです。ドラマ『空飛ぶ広報室』でも自衛隊の広報ビデオのなかに自衛官がアルコールを出す店で遊んでいるシーンが問題となり、ビデオが使えなくなる演出がありました。そういう世界なのです。  だから、自衛官の一部は職業を聞かれると「会社員です」と答えることが多くなります。また、自衛隊のことを「わが社」と表現する人も多いのです。自衛官ということが知られるといろいろと面倒なことになるとかなりの隊員が自覚しているため制服出勤をする人がいないのです。
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自衛隊は正当暴力も許されない
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