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東京唯一の造り酒屋「小山酒造」廃業のショックを地元赤羽の漫画家・清野とおるが語る

 創業明治11年(なんと1878年!)から続く、東京23区唯一の作り酒屋「小山酒造」(東京都北区)が今年2月28日、清酒製造事業から撤退するとのこと。
小山酒造

小山酒造株式会社(※ホームページより)

清野とおるさんに聞く「小山酒造」と赤羽

 すでにツイッターなどのSNSを通じて、情報が拡散され、地元住民やファンの間に衝撃が広がっている。その小山酒造が製造元で、北区岩淵の湧き水を利用して作られるのが「丸眞正宗」。23区唯一の日本酒銘柄で「東京の地酒」として広く認知されていたが、今回の撤退で「なくなるのではないか…」と不安視されている。  そんな事態にショックを受けている一人が、地元赤羽を舞台にした『東京都北区赤羽』(双葉社刊)や、食がテーマの漫画『ゴハンスキー』(扶桑社刊)などで知られる、漫画家の清野とおるさんだ。  小山酒造や「酒飲みの聖地」赤羽の魅力について、話を聞いた。
ゴハンスキー04

清野とおる『ゴハンスキー4巻』好評発売中!!

「酒飲みの聖地と呼ばれる赤羽にとって、小山酒造は精神的支柱……というのは大袈裟かもしれないけれど、シンボリックな存在であったと思います。安くて旨い酒屋があるだけでなく、赤羽には23区唯一の酒蔵があるんだぞ? すごいだろう? 羨ましいだろう?と。酒飲み赤羽民の一人として、僕も密かに誇らしく思っていました。  ほかの町に住む友人知人への手土産にすると喜ばれるので重宝しておりました。特別な人へのプレゼントには、ちょっと高めの『純米大吟醸』とか、贈ってみたりしちゃったりして。『これ、赤羽で作ってる酒なんですヨ』と言って手渡すと、そこから話も広がるし、いいことづくめでした。これからは何を手土産にしようかな……」

赤羽の人気おでん屋にも影響が…

 赤羽といえば、せんべろや飲み歩きでも知られる土地。さまざまな立ち飲み屋が並ぶなか赤羽駅前で、夕方からお客が絶えない人気のおでん屋が「丸健水産」。  平成8年度水産庁長官賞を受賞したはんぺんや、だしの染み込んだ大根など、常時50種類のおでん種が売られています。清野さんも丸健水産を訪ねたときは必ずというほど、注文するメニューがあるそうで。
丸健水産

創業は1957年、初代がおでんだね屋として店を出したのがはじまりという「丸健水産」

「丸健水産といえば、いわずもがな、丸眞正宗をおでんのスープで割って七味を振って飲む『だし割り』が有名です。これを最初に知ったのは10年以上前で、隣で、だし割りを飲んでた知らないおじさんが、得意げに教えてくれました。『おい、これ、知ってるか? ここでは丸眞正宗を、こうやって飲むのがいいんだぞ』って。  さっそく真似してみたところ、まんまと『最高』だったわけで、以後丸健水産に行くたびに、必ずコレを飲むことになったのは当然の流れでしょう。今でもたまに、近くで飲んでる知らないおじさんが、得意げにだし割りを教えてくれたりしますね。  そのとき、あえて知らないフリして、おじさんなりのだし割りの良さを聞かせてもらった後に、自分もだし割りを飲むのが好きです。丸健水産と丸眞正宗の最強コラボを、もう楽しめないなんて、悲劇ですよ」
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噂の「だし割り」を飲んでみた!
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※現在発売中の『ゴハンスキー』4巻では、漫画家・清野とおるさんが、小山酒造だけじゃない(!)地元・赤羽の思い出から、幼き記憶こびりついた極上の「水餃子の味」、同じく大好きなお酒「ホッピー」のこだわりの飲み方までを描いています。酒のサカナにもぜひ!

ゴハンスキー4

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