カーライフ

日本のエコカーの暗い未来「水素社会どころかEV時代すら来ないかも」と考える理由

 ルノー日産連合は、ダイムラー(メルセデス・ベンツ)やフォードと共同開発する燃料電池車(FCV)の商用化を凍結し、今後、電気自動車(EV)に経営資源を集めるという。合理的な判断ではないだろうか。  燃料電池車は、究極のエコカーとも言われ、かつては多くの有力メーカーが量産化を最終目標にしていた。その筆頭はトヨタとダイムラーだった。その後トヨタは、世界初の量産FCVとしてMIRAI(723万円)を発売したが、もう一方の雄であるダイムラーを含む共同開発FCVの商品化が凍結されたのは、FCV熱の世界的な冷却を象徴している。

2014年に発売された世界初の量産型燃料電池車トヨタMIRAI

 もちろんルノー日産連合も、FCVを見離したわけではなく、研究は続けるが、「当面の普及はない」と判断したわけだ。  私は以前から、FCV乗用車は普及しないと考えていた。水素ステーションなどのインフラの整備が進んでいないし、今後整備の減速も予測される。

3000台しかないFCVに対して100か所もある水素ステーション

 水素ステーションを1か所作るには、ガソリンスタンドの数倍、5億円程度かかるといわれ、まだ全国に約100か所しかない。しかも、どこの水素ステーションでも、水素充填中のFCVを見たことがない。業者は国策を信じ、まったくの赤字覚悟で、先行投資で設置している。

東京都杉並区の水素ステーション。日曜祝日は休業、その他は9時30分から17時まで営業

 経済産業省は2年前、2025年までに水素ステーション320か所という目標を掲げた。つまり、現在の100か所というペースは決して悪くないのだが、その時のFCV普及目標台数は、20万台となっている。MIRAIの販売台数は、昨年1年間で766台。発売から3年余の合計でも、まだ3000台弱だ(ホンダのFCV、クラリティFUEL CELLはリースのみ)。  3000台に対して、100か所の水素ステーション。MIRAIの航続距離は、充填1回で実質400km程度だから、月に2回充電するとしても、1日あたり平均2台前後しかステーションに来ない計算になる。  5億円も先行投資して、維持費もかかって、売り上げは実質ゼロに近いのだから、ビジネスになるはずがない。  将来の見通しも暗い。現状の年間1000台弱という生産・販売ペースでは、20万台に到達するのに200年かかる。今後大量生産が可能になったとしても、大量に売れる保証はどこにもない。  トヨタは、FCV普及のため、莫大な資金で開発した燃料電池の特許を、他メーカーが利用できるように公開したが、誰も後に続いていない。これでは、FCVの普及は当面ないと判断するのが自然だろう。

水素ステーションには、その場で水素を製造する「オンサイト式」、工場などから水素を運び、固定した施設にためておく「オフサイト式」、大型トレーラーなどで水素や補給設備を持ち運ぶ「移動式」の3種類がある

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