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共産党まで譲位に賛成するご時世、陛下に弓引くのは余程の変わり者だけだ/倉山満

皇族は、いついかなる時でも黙っていなければならないのか?

 先日、秋篠宮殿下が記者会見をなされた。ワイドショーは「お婿様問題」に関心が集中したが、それは現象であって本質ではない。  秋篠宮殿下は、大嘗祭は宗教色が強いので国費で行うのが適当かどうかと疑問を呈された上で、憲法の政教分離との関係を考えると内廷会計で行うべきではなかったかと述べられた。さらに「大嘗祭自体は私は絶対にすべきものだと思います」との前提で、「身の丈にあった儀式にすれば」と述べたにもかかわらず、宮内庁長官が「聞く耳を持たなかった」と批判された。異例中の異例だ。  皇族が宮内庁長官を公開の場で批判するなど、恐懼に堪えない。私が名指しされた立場なら、恐れ多くて即座に辞表を出して許しを請う。ところが、当の長官の山本信一郎というお方は「困惑するばかり」だとか。実に太い神経だ。  そして保守を自称する人々から、いっせいに秋篠宮殿下への批判が噴出した。「殿下は何か勘違いしているのではないか」「皇族の発言としては不適切」「場をわきまえよ」云々。  もちろん、皇族が好き勝手に社会に向かって発言すれば混乱する可能性もあり誰も責任はとれないから、「すべきではない」という意見はわかる。しかし、「してはならない」は、「皇族ロボット説」ではないのか。皇族は、いついかなる時でも黙っていなければならないのか。  頭ごなしに殿下を批判する前に、私は歴史学と憲法学を少しばかり学んだ知見で読み解きたい。  大嘗祭は、食べ物の豊穣を祈る、皇室で最も重視される祭祀の一つである。神道の儀式によって行われるので、宗教色が強い。ただし平成の御世代わりでは国家にとっても大事との理屈で国費が投じられた。あの時は、現憲法になって最初の大嘗祭だったので、国の行事とすることに意味があった。皇室の少ない予算(3億円ほど)で行うと、貧相になりかねなかった。大嘗祭は国の支出により、20億円強で賄った。  だが、国の行事にするとは政府の干渉、すなわち日本国憲法の制約を受けることとなる。大嘗祭で何が行われたかは詳らかではないが、衆人環視で行われた大喪の礼では暴挙がなされた。午前中の葬場殿の儀は皇室の行事として、午後は国の行事として行われた。結果、午後からは鳥居は取り外され、神道の祭具も取っ払われた。日本国憲法第20条が定める、政教分離の原則に従ってである。憲法は国の宗教活動を禁止している。では、何が宗教活動に当たるのか。その解釈を行うのは、内閣法制局である。  そう言えば、譲位の際にも法制局は猛抵抗をした。「天皇の意思によって譲位がなされてはならない」と。天皇ロボット説にしがみつく現長官横畠裕介の執念はすさまじかった。今でも、元号の事前公開に拘っている。建前は「システム上の問題」としているが、平成の御世代わりは一日で行ったではないか。問題なのか。  実際は、新帝がご自身で、ご自身の名前となる新元号を公表するのではなく、政府の名前で公表したいらしい。  皇室は宮中に孤立している。守るのは心ある国民しかいない。
1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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