仕事

派遣社員の42歳女性が10社を漂流した理由。「必死で働きすぎ」と陰口も…

 ますます広がる日本社会の格差。その日暮らしを強いられる年収100万円程度の人たちは、過酷な環境下でどのように過ごしているのか。今回は年齢とともに過酷さが増す中高年の女性に注目。  総務省統計局の労働力調査(2018年)によると、女性の1451万人が非正規の職員・従業員として働いている。その中のひとり、仕事に真摯に取り組む彼女が、なぜ漂流したのか実態を探る。
年収100万円の絶望

「群れるのも媚びるのもちょっと苦手なんです」川田明美さん(仮名・42歳)

中高年女性がおちいった派遣漂流

「女性が輝く社会づくり」を政府は掲げているが、職場で輝けず漂流するのは「群れるのも媚びるのもちょっと苦手なんです」という川田明美さん(仮名・42歳)だ。 「就職氷河期の世代で、音大だったので就活は難航しました。やっとの思いで事務職につきましたが、社員50人中で女性はわずか3人。女子トイレもなく、生理用品を捨てる汚物入れも『気持ち悪い』と置かせてもらえない酷い扱いでした。3年の我慢の末に退職しました……」  川田さんが再就職活動していた当時、人材派遣の規制緩和の流れもあり、何げない気持ちで派遣会社に登録。そこから漂流が始まった、という。 「サービス残業を求められて断ったら『生意気だ』と契約を打ち切られることもありました。あと、パワハラが嫌で上司に『やめてください!』と言ったら、『女は馬鹿なふりしておけばいいんだよ!』と罵倒されたことも……」  上司のパワハラをICレコーダーで録音し、派遣会社に提出するとその会社からの紹介がなくなったこともあったそう。  年収100万円の絶望 10社以上を経て、現在はテレフォンオペレーターの派遣。女性が多い職場だが、女の敵は女だったのだ。 「あんまり女性だけで群れるのが好きじゃないから、飲み会も断ったら露骨に無視されることも増えました。若いコに『あのババア必死で働きすぎ(笑)』と陰口を叩かれることも。ヤル気を出せば叩かれる。女性の社会進出って、何なんですかね……」  厚生労働省が発表した派遣労働者実態調査(2017年)では、通算派遣期間は3年を超えるのは18.2%、「1年を超え3年以下」が最も高く34.6%だった。 「仕事で苦労してきたので働けるだけでありがたい。人に迷惑をかけずにひっそりと死にたいですね」  と話す表情は物悲しげだ。政府が掲げるように、川田さんのような派遣で働く女性たちが輝ける日はいつ実現するのだろうか。 <取材・文/週刊SPA!編集部>
年収100万円で生きる-格差都市・東京の肉声-

この問題を「自己責任論」で片づけてもいいのか――!?
おすすめ記事