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京セラを“60年間黒字”に導いた稲盛和夫氏のすごすぎる経営手法を5分で解説/馬渕磨理子

 ビジネス書ベストセラー作家の一人としても知られる、京セラの創業者・稲盛和夫氏の名を知らない人はほとんどいないでしょう。KDDIの創業に携わったほか、経営破綻に伴い上場廃止となったJALの再建に乗り出し、2年目には営業利益が過去最高の2049億円を超え、同社を再上場へ導いた人物です。そんな稲盛氏が創業した京セラには彼が生み出した独自の経営手法があります。 京セラドーム それが「アメーバ経営」。今回は、創業以来一度も赤字に転落することなく黒字経営を続け、売上高2兆円が視野に入ってきている京セラを支える「アメーバ経営」について5分ほどで解説します。

利益率昨年比20%増!好調のワケは…

 まずは、京セラがどれだけ好調なのかを確認しておきましょう。京セラの損益計算書(略して“PL”= profit and loss statement)を見てみます。PLとは、企業に「出てくるお金」と「入ってくるお金」を示したグラフのこと。

筆者作成

 京セラのPLを見てみると… 2014年…約1.4兆円 ↓ 2019年…約1.6兆円  と推移。2020年の売上高は約1.7兆円を見込んでおり、6年間で約2500億円増える見込みです。  一方、純利益は… 2014年…約880億円 ↓ 2019年…約1030億円(+150億円)  と、150億円の増益。さらに、2020年は前年比21%増の1250億円に着地する見込みです。  いったい、なぜここまで成長を継続することができるのでしょうか?

甲子園強豪校・智弁和歌山のような戦略

 先に結論を述べます。  京セラ成長継続最大の理由は、バランスのよさ。現在、京セラは大きく6つのセグメント(事業領域)を持つ会社ですが、その中でもっとも売上が高いのはドキュメントソリューション事業。これは企業や官公庁向けにプリンターや複合機をグローバルに提供している部署です。  しかし注目すべきは、それ以外のセグメント。現在6つある京セラの事業は、どこかに売上高が偏ることなくすべてバランス良く構成されているのです。 【京セラの各セグメントの売上割合】(各%は2018年3月期) 1位「ドキュメントソリューション」(24%) 2位「電子デバイス」(20%) 3位「産業・自動車用部品」(18%) 4位「半導体関連部品」(16%) 4位「コミュニケーション」(16%) 6位「生活・環境」(7%)

2018年3月期京セラHPを基に筆者作成

2018年3月期京セラHPを基に筆者作成

 これが何を意味するのでしょうか。それは、何かがコケても、大きな痛手にはならないということ。人気が一つの部門に集中するよりも、分散していたほうが企業として大きな赤字を防ぐことができるのです。  これは、ここ最近の高校野球の強豪校の変化を見ればわかりやすいでしょう。かつては、エースピッチャーを擁す高校が次々と甲子園で勝利を収めてきました。しかし、ここ数年は選手一人に連投させることのリスクが自覚され始め、エースピッチャーを温存できるように、分厚い選手層を持っているチームが勝ち上がれるようになりました。  具体的には、2019年夏の大会で言えば、智弁和歌山や履正社がそれに当てはまると言えるでしょう。一方、佐々木投手を温存して岩手県大会決勝で敗退した大船渡高校が実質的に「一強」頼みになっていたチームの典型例です。
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