エンタメ

和牛、ミキ、「M-1」準決勝でなぜ彼らは敗れたのか? アインシュタイン、トム・ブラウンも…

「M-1」大波乱の準決勝をユウキロックが徹底解説

 わずか「26分の9」の歓喜。その裏で涙を流した17組の漫才師がいる。「M-1グランプリ」準決勝で敗退した漫才師について考えたい。  ライブビューイング観戦から帰宅後、現地で観戦していたA氏から電話がかかってきた。ちなみにA氏はかねてより「M-1」について意見交換しているお笑い通の編集者である。俺は第一声に聞いた。 「決勝メンバーに納得いってますか?」    彼は答えた。 「いってません」  俺はある程度納得していたので、A氏の反応は意外だった。    前回の記事のとおり、確かに今回は「ミルクボーイ」「オズワルド」「からし蓮根」以外のコンビは「審査員の見方によって変わるのでは?」という部分が少なくとも1か所はあったと思う。そして、俺は「会場のウケ具合」を知らない。ライブビューイング会場での準決勝の音声は、観客の笑い声が小さく、反応がほとんどわからなかったからだ。  A氏に聞いた。 「誰が納得いってないですか?」  彼は答えた  「『アインシュタイン』です」  俺は落胆した。 「あー、やっぱりウケてましたか……」

優勝候補「アインシュタイン」の誤算

 8月2日。「M-1グランプリ」1回戦のMCを担当した日に、「誰が優勝すると思いますか?」という質問を受けた。何も見ていない中での予想になるが俺はキッパリと答えた。「『アインシュタイン』です」と。  彼らは2015年に復活した第11回大会から準決勝に進出する常連コンビだった。しかし、レギュラー番組の共演者である盟友「アキナ」「和牛」が結果を残す中、どうしても決勝の壁を打ち破ることができず、昨年の第14回大会では準々決勝敗退という結果に終わってしまった。  俺から見て「アインシュタイン」にはひとつ大きな問題があった。それはボケ担当の稲田君の顔である。誤解を恐れずに言わせてもらうと、稲田君の顔はただの「ブサイク」というカテゴリーの顔ではなく、「笑っていいのか悪いのか」という顔なのだ。現に2017年の第13回大会で敗者復活戦に出場した「アインシュタイン」に対して、番組サイドがつけたキャッチフレーズが「笑っていいんですよ?」だった。  昨年までの「アインシュタイン」は、大阪では人気、知名度ともに抜群だが、東京での知名度はそれほどでもなかった。大阪で漫才をする場合は、稲田君の顔を触れずに漫才をスタートしても知名度があるので問題はないが、東京ではそうはいかない。素通りできるほどヤワな顔ではない。  それは「M-1」でも言うに及ばず。準決勝の東京会場では、どうしてもその時間を取らなければならず、取らなければ取らないで、序盤に「笑っていいのか悪いのか」という変な空気が漂っていたのだ。  しかし、彼らは2019年、ブレイクを果たす。全国的に知名度を上げて全国ネットのテレビでもよく見る存在になった。大阪ではすでに愛されキャラだった稲田君の人気は爆発。全国民が稲田君の顔を許容した。そこからはすごかった。元々自力があり大阪の賞も数多く獲得している彼らは、ネタ番組でも爆発的なウケを取っていく。そうして迎えた「M-1グランプリ2019」。2015年の第11回大会で優勝した「トレンディエンジェル」の流れによく似ている。この時流が「アインシュタイン」を王座へと導く。そう予想していた。 「アインシュタイン」のツッコミ担当である河井君はツッコミとしての実力はかなり高く、ツッコミの言い回しで笑いを作っていくことができる逸材である。「アインシュタイン」のネタの傾向として稲田君が「浮いた存在」になることが多く、河井君は腕があるので、しっかりと稲田君の存在を引き立てるために、感情に忠実に「引き気味」のツッコミを入れる。ただ、「M-1」では「アインシュタイン」のスタイルは、「押し気味」のツッコミが出るような漫才をしたほうが有利だと俺は考える。極端な言い方をすれば、河井君がどこまで怒り狂えるのかがポイントだと思う。  準決勝の舞台に「アインシュタイン」が登場した。序盤、彼らの設定は完璧だった。俺も漫才師時代に相方の感情を引き出すために、この「怒りの手法」を使ったことがある。河井君が怒りをあらわにしなければならない設定だった。しかし、中盤から後半にかけて少しずつ雰囲気が変わる。「まずい!!」。俺は心の中で呟いた。さっきまで怒っていた河井君のテンションが少し下がっている。そして、ネタが終了した。右肩上がりで終わりたい漫才。それが少し下がって終わった印象だった。  A氏は言う。 「ユウキさんが指摘した部分は納得しましたが、それでもウケの総量ではトップクラスだと思いました」 「大きな大会の重要な舞台」ということをお客さんも意識しすぎて、前半は会場の空気は重く、笑いの力で徐々に忘れていき、後半はウケがよくなる。これが「『M-1』準決勝あるある」だ。「アインシュタイン」の出番は最終のDグループ。彼らのウケを、審査員はそのまま受け取らなかったのかもしれない。ならば敗者復活戦ではっきりさせようじゃないか。「アインシュタイン」の実力を。
次のページ right-delta
結成7年目にして高い期待値を背負わされた「ミキ」
1
2
3
4
テキスト アフェリエイト
新Cxenseレコメンドウィジェット
おすすめ記事
おすすめ記事
Cxense媒体横断誘導枠
余白
Pianoアノニマスアンケート