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ヤマダ電機が大塚家具を子会社化した理由。ニトリと明暗分けた2つの弱点

 12月12日13時10分ごろ――。JR五反田駅東口から歩いて5分のところにある「パネッテリア・アリエッタ」でパンを買い、同僚女性(41歳・2児のママ)とランチを食べていたときのことです。私のiPhone11proのホーム画面に、プッシュ通知で衝撃的なニュースが飛び込んできました。

大塚家具、有明本社

<ヤマダ電機が、経営再建中の大塚家具を子会社化する方向で最終調整に入った>  思わず、それまでの会話を遮って、私はiPhone11proの画面に釘付けになりました。つい数年前まで銀行借り入れもない強固なバランスシートが売りだった大塚家具。そんな企業が赤字を垂れ流し、今や資金ショート寸前に。そしてついに、同社は単独での生き残りを諦め、ヤマダ電機の傘下に入ったのです。  ヤマダ電機は、12月末にも第三者割当増資を引き受け、大塚家具の株式を約44億円で51%取得、同社を子会社化する予定です。  一体、ここに至るまでに何があったのか。 「どうせお家騒動でしょ?」 「社長が他人の意見を聞かずに無能だったからでしょ?」  そんな居酒屋談義で交わされそうな“経営分析”を超えた今回の決断の背景にあるものを、財務状況の分析を通して5分程度で解説しましょう。

明暗分けたニトリと大塚家具

 報道後、すぐにiPhone11proで大塚家具の株価のチャートを見ると、株式市場では同社への買い注文が殺到していました。結果、大塚家具の銘柄はストップ高となり、2日間で同社の株価は1.8倍(13日終値292円)となりました。おそらく、最終赤字が続いてきた大塚家具の経営再建が進むとの思惑から、株式市場では買いが集まったのでしょう。  そもそも大塚家具はヤマダ電機グループの傘下に入る前はどのような財務状況だったのでしょうか。同業で好調なニトリと比較してみましょう。こちらは2019年2月のデータです。 ・売上高原価率 大塚家具…56% ニトリ…45% ・販管費 大塚家具…58% ニトリ…38%  一目瞭然。大塚家具はニトリに比べて売上高原価率と販管費が高いです。

弱点1:売上高原価率と販管費の高さ

 この売上高原価率と販管費の高さこそが、売上高が減り続ける大塚家具をさらに窮地に追い込んだのです。どういうことでしょうか。 売上高原価率=(売上高)に占める(原価)の割合  大塚家具の場合、商品を作るために最低限必要なコストである売上高原価、つまり前提となるコストが重くのしかかっていたので、売上高が減少しても、必要なコストは変わらないため、利益を圧迫しやすい構造になっています。それに、付け加えて大塚家具では在庫圧縮を目的とした利益度外視のセールも実施し、商品を販売しても利益が乗らない財務状況となっていました。さらに、そこから人件費、広告費、などの経費がかかってきます。  一方、ニトリはベースとなるコスト(売上原価)も、販管費も低く押さえているのです。だから少し売上高が減少するなどの不調もへっちゃらなのです。

4年連続赤字。頼りにしていた資金目処も立たず

 では、直近の大塚家具の決算はどうだったでしょうか。(2019年第三四半期の決算。11月14日に発表)  売上高は、前年同期比23.2%減(210億300万円)。営業損失は、29億1800万円の赤字(前年同期は48億円6300万円の赤字)。純利益は、30億6300万円の赤字(前年同期は30億5300万円の赤字)。  売上高は4年連続減収を続け、営業赤字も4年連続となっています。これだけの赤字が続くと、銀行からの融資基準に引っかかる可能性が非常に高く、資金調達も難しい状態です。端的に言えば、「今月、ヤバいからお金貸して!」と言っても、「返せる見込みある? ずっと稼げてないよね? それなら貸せないよ」と言われている状態です。  そんな状況で大塚家具は資金繰りに奔走していました。  今年2月、米系投資ファンドであるハイラインズ日中アライアンスファンドを含めて第三者割当増資で38億円の調達を計画していました。しかし、この計画は事前にキャンセルという結果に。実際に資金調達できたのは26億円でした。資金調達が非常に厳しい状態だったのです。
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なぜヤマダ電機は子会社化を決めたの?
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