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「Slack病み」する人が増加。休み中でも24時間対応を迫られる…

 メールよりもカジュアルなコミュニケーションで業務を進められ、ファイルの共有も簡単。電話や対面でのコミュニケーションと異なり、発言や指示の内容が記録として残るといったメリットから、普及している「Slack」や「ChatWork」などのビジネスチャットツール。
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※画像はイメージです(以下同)

 フリーランスなど外部の人間や組織と一緒に仕事をする機会が多い職場や、リモートワークを導入する企業では、ほとんど不可欠なコミュニケーションツールとなりつつあり、実際に活用している人も多いだろう。  しかし、現代のビジネスが求めるスピードや柔軟性、業務効率に追随することが個人の幸せにつながるかは別問題。今回はビジネスチャットがひとつの原因となって、ブラックな働き方が加速したケースを紹介しよう。

実質、週7日勤務で心身を病んだ

 台湾出身の陳さん(仮名・26歳・女性)は4年制大学を卒業後、日本のインスタグラムなどのSNSマーケティング関連会社に就職した。  当初はやりがいのある業務内容に高いモチベーションを抱いていたそうだが、「深夜だろうが土日だろうがお構いなし。そもそも休みの日しか連絡を取れないようなインフルエンサーも多かったので、ほとんど週7日で働いていましたし、台湾帰省中も含めてビジネスチャットをチェックしない日はありませんでした」という。  もちろん、陳さん以外の社員たちも同じような状況で、30人にも満たない中小規模の会社だったが、心身を病んで辞める人が続出したらしい。陳さんも2年半年ほどで退職し、曰く、「休日や業務時間などがしっかりと管理されたメーカー系の企業」に現在はジョブチェンジしている。

クライアントに24時間対応を迫られる

首輪 12月下旬、現在は無職で早めの年末休暇を謳歌していた佐藤さん(仮名・28歳・男性)もビジネスチャットでのやりとりで、精神をすり減らし、退職に至った一人だ。EC系の会社でプログラマーとして働いていた佐藤さんは、特にIT業界では「Slack」などを愛用している人が多く、病んでしまう人たちが多いと証言する。 「社内でやっているぶんにはいいんですけど、クライアントやフリーランスの関係者なども絡むと24時間縛られて、対応を迫られる。次から次に案件が飛んでくるというケースが同業者では多いみたいです。平社員だった僕が一番つらかったのは、社長とのチャットワークのやりとりですね。最終的に会議室に呼び出されて、報告や相談内容について問いただされたり、説教されたり。反対に管理職の人間からは『休み明けのチェックが大変』といった声も多くありましたが」  メールなどでも同じようなことは言えるが、最初から対面で相談できれば発生しない余計なやりとりや誤解が増えてしまう面は否めない。 ビジネスマン そもそもシームレスで職場とつながっているスマホや社用携帯は首輪のようなもの。メールでも電話でも、休みの日に仕事の連絡が来て時間外の対応を求めるなど、ほとんどハラスメント案件だろう。ビジネスチャットを導入した結果、病んでしまう人も多いようだが、問題はあくまでも会社や本人の使い方ということのようだ。<取材・文/伊藤綾>
1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催。X(旧Twitter):@tsuitachiii
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