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非正規雇用の40代・月収20万円…それでも正社員を目指さないワケ

 国税庁の発表によると2018年の日本の平均年収は441万円だ。しかし今、非正規雇用で平均を大きく下回る低収入、その現実に危機感を持つこともなく好きなことをして暮らす無自覚な貧困層が増えているという。その実態に迫った!

非正規雇用でも趣味と貯金には十分で不満ナシ

▼瀬戸際に立つ40代のまったり貧困:中野伸弘さん(仮名・42歳)
まったり貧困で生きる

鉄道に乗って旅さえできれば満足という中野さんの旅費は5泊6日で3万円ほどだという

 就職氷河期に就活で失敗し、非正規雇用のまま40代を迎えている人は多い。工場で派遣社員として働く中野伸弘さん(仮名・42歳)もその一人。大学卒業後の20年間、派遣社員や契約社員として職場を転々としている。 「今の月収は20万8000円。贅沢には程遠いけど、独り身なので生活には困っていません。現状車がなくても十分生活できているし、若い頃に比べると物欲もないのでおだやかな生活ですね(笑)」  ギャンブルも一切せず、お酒も1~2か月に一度、外で飲む程度なのだとか。 「アルコール自体がそんなに好きじゃないので、家飲みもしません。平日は職場と家を往復するだけの生活なので、安月給でも少しずつ貯金もできていて、300万円ほどあります」  質素な生活を送る中野さんの唯一の趣味が、鉄道を使った旅だ。 「鉄道が好きで、3日以上休みが取れるときは乗り鉄の旅に出ていました。旅といっても移動はJRの普通列車乗り放題の『青春18きっぷ』や周遊券などの割安の切符だし、泊まるのもゲストハウスやネットカフェなので出費は少なめです。今は私のような契約社員でも有休が取りやすいので、旅にも出やすいですね」
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帰省の際も鉄道旅行を兼ねて「青春18きっぷ」を利用

 とはいえ、中野さんの職場では、同じ仕事内容でも非正規社員と正社員とで、年収で100万円以上も差があるという。正社員を目指す気はないのだろうか? 「30代半ばまでは何度か正社員を目指して就活もしましたが、失敗続きで諦めました。逆に今は、現状を受け入れたことで精神的に楽になりましたね。それに実家を相続する予定なので、この先も住むところには困らないし、いざとなったら売ってお金にすれば大丈夫かなって。あとは非正規なら雇ってくれるところはあると思うので、老後も細々働き続けますかね」  相続予定の実家は、一軒家で地方ながら街の中心部から近いという。物欲がなく、淡々と働き続ける意欲がある中野さんならば、低所得でも安定した老後を迎えることができそうだ。 【収入】 月収(手取り)20万8000円 ―――――――――――― 【支出】 家賃 5万4000円 食費 3万5000円 水道光熱費 1万5000円 通信費 1万円 趣味(鉄道) 4万円 保険料 1万5000円 雑費 2万2000円 貯金 1万7000円 ―――――――――――― 収入-支出の合計 0円 <取材・文/週刊SPA!編集部>
年収100万円で生きる-格差都市・東京の肉声-

この問題を「自己責任論」で片づけてもいいのか――!?
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