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企業は社内ニートを養うべき!?

ちきりん氏

ちきりん氏

 企業に雇用されながらも職務に従事していないサラリーマン、「社内ニート」。SPA!では、これまでさまざまなタイプの社内ニートを紹介してきた。彼らは、周囲のそしりも気にしない、いずれも精神的に強い人ばかりといえる。だが、神経が図太い怠け者の役得だろうと憤るのは早い。知らないうちに社内ニートも役に立っていると、人気社会派ブロガーのちきりん氏は指摘する。 「組織で利益のほとんどを上げているのは10%程度の人たち。残りの80%は人並みに仕事をする層で、その下の10%が社内ニートにあたるでしょう。ただ、この10%の社内ニートがいるおかげで、80%の凡人たちの精神衛生が保たれている側面はあります。この不況下で、最初にリストラされるのは社内ニート。彼らがクビになってないならまだ大丈夫、と安心して働けますよね。社内ニート状態にあることに自己嫌悪を抱く人は、病気になったり出社拒否になったりしますが、のうのうとニートできている楽観的な層は、そのほかの社員に優越感を抱かせたり、社内ニートについての文句を言うことでストレス解消になったりと、サンドバッグ役を担っているんですね」  現在、社内失業者が465万人に対し、完全失業者は291万人と言われている。後者にしてみれば、同じ失業者なのに会社員の肩書を持つ社内ニートの存在は、複雑なのではないだろうか。 「前提として、社内ニートを置いておけるのは体力に余裕のある大企業がほとんど。そして、大企業は解雇規制があるため、そうそうクビにはできません。今の日本は、国と大企業が手分けして失業者の面倒を見るという仕組みになっています。もし465万人の社内ニートを全員解雇したら、自動的に失業保険は465万人分増やさなければならず、ハローワークの人件費も跳ね上がります。それらは税金でまかなうことになり、結果的に失業保険の額が減る可能性も出てくる。会社員と完全失業者では心持ちも大きく違うので、精神疾患者も増えるかもしれませんね。でも、今のまま社内ニートが会社員でいれば、消費をしてくれて経済も回ります。社内ニートを養うのは、大企業が行う社会福祉のようなものなのです」  これらを踏まえ、社内ニートは必要悪であるとちきりん氏は語る。 「どうやっても失業者がいなくなることはないですからね。ただ、ある会社で社内ニートになってしまっている人も、よそへ行けば活躍できる可能性は十分にある。なのに解雇規制のせいでクビにもされず、ぬくぬくとラクな社内ニート生活を送っていて、活躍の機会を失っているとしたらもったいない。たとえ本業で社内ニートだとしても、副業でもいいので何かしら自分の力を発揮できる場所は持っておくのをオススメします」 【ちきりん氏】 日本企業、外資系企業を経て早期退職。「そんじゃーね」の締めが特徴的なブログは現在累計4000万アクセス超。著書に『自分のアタマで考えよう』(ダイヤモンド社)など 取材・文/朝井麻由美 ― 社内ニートの(驚)処世術【11】 ―
自分のアタマで考えよう

ちきりん氏の思考を覗く!

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