仕事

ダメな相手のヤル気を起こす「Yes But」話法

本音で語り合う――素晴らしい、と思う。が、こと職場においては“建前”が無用な軋轢を避け、仕事を円滑に進める潤滑油ともなるのも事実。上司⇔部下の会話に隠れる本音を酌みつつ、言わぬが花が大人のコミュニケーションだとも思うのだ <仕事の評価の建前⇔本音>(上司編) ◆「褒めて伸ばす」は職場でも有効!? 上司×部下[本音⇔建前] 部下の顔色声色を逐一窺っていたら、上司としては言うことも言えなくなってしまう。が、仕事である。ダメなものはダメと伝えなくてはならない。そこには部下のモチベーションが下がらぬよう、細心の注意が払われていて。  期待値に届かなかったときは、「いいと思うよ」。気に入らないときだって「ちょっと、考えさせてくれ」と保留に。言いたいことはたくさんあろうとも、「いいんじゃないか、ただ、敢えて付け足すなら……」といったように慎重だ。 「最初に肯定してあげることで、後から続く注意を受け入れやすくする。このYes Butの使い方は有効ですよ」とは人材育成のプロ・前川孝雄氏。 「褒められると人の脳の報酬系と呼ばれる部分が活性化され、快感を覚えます。一度、快感を得たら、人は同じ行動を反復しようとする。建前でも褒められればうれしいですから、また頑張ろう、この人とまた仕事をしたいと思う。今は決して褒められた仕事ぶりでなかったとしても、褒めることは、この先へ期待できる人には有益な初期投資になります」(社会心理学者・渡部氏)  とはいえ、「それだけ褒めてもダメな人はダメ(笑)」(同)だそうなので、見切りも大切か。 「協調性や柔軟性がない後輩に『お前は自分を貫くヤツだな』と注意した」(38歳・男・商社)なんてのは、“褒める力”のいいお手本かも。  コーチングのプロ播摩早苗氏によると「欠点というのは、行きすぎた長所の場合が多い。そのよいところだけを切り取って口にすると“建前”になるんです」とのこと。  なるほど。上司からの建前の翻訳ルールはコレ、かも。 ※仕事の評価の建前⇔本音(部下編)はこちら https://nikkan-spa.jp/171644 【上司⇒部下の本音と建前】 【建前】少しだけ、コメントがあるんだけど 【本音】もう一度、やり直しね 【建前】とてもユニークだねえ 【本音】ピントはずれ。コメントしづらいなあ 【建前】今回は、特に期待してるから 【本音】お前は失敗続きだからな! 【建前】○○君ならできると思ってたよ 【本音】内心ヒヤヒヤだったけどな! 【建前】(仕事でミスをした部下に)しっかりやれよ 【本音】このくらいはできるはず。次に期待 【建前】(仕事でミスをした部下に)いいよ、もう気にしないで 【本音】ダメだこいつ。使えねえ。せめて楽しく仕事をしよう 【建前】(まだ仕事の少ない新人に)さすが優秀だな~ 【本音】まだまだこれから地獄がまってるぞ 【渡部 幹氏】 社会心理学者 北海道大学助手、京都大学助教等を経て現在、早稲田大学高等研究所招聘研究員。社会制度や組織の維持・変容を司る心理的基盤について研究。共著に『不機嫌な職場』(講談社) 【播摩早苗氏】 フレックスコミュニケーション代表 各種社員研修、セミナーを設計、運営するコーチングの専門家。近著に『えっ、ボクがやるんですか?』(幻冬舎)。5月に同テーマの管理職版をPHP研究所から刊行予定 【前川孝雄氏】 FeelWorks代表取締役 『リクナビ』編集長などを歴任後、リクルートを退社。人材育成・組織活性化コンサルティングに従事。青山学院大学兼任講師も務める。最新刊『働く人のルール』(明日香出版) イラスト/StudioCUBE. ― 上司×部下[本音⇔建前]翻訳辞典【5】 ―
不機嫌な職場

病んだ職場の処方箋

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