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島本和彦のマンガは名言の宝庫である

幼い頃から大人になった今に至るまで、大好きだった漫画やアニメのセリフが、人生のターニングポイントや心が折れそうなときに、自分たちを奮い立たせるサプリになることがある。そんな心の金言を紹介しよう ◆南 信長氏が語る人生のいろんな場面で応用が利く島本作品の逆説的名言  個人的に目からウロコだったのは、島本和彦『炎の転校生』の「心に棚をつくれッ!!」ですね。勝負に敗れた自分には何も言う資格がないと悩む主人公にライバルが放ったセリフですが、自分のことは棚に上げてでも言うべきことは言えと。ご都合主義のようにも聞こえますが、普通は否定的に見られる行為をあえてやるのは勇気のいること。とりあえず前に進む力を生み出す名言です。ほかにも「自分の墓穴くらい自分で掘れなくてどうする」など、島本作品には逆説的名言がたくさんあって、人生のいろんな場面で応用が効く。  意外と刺さるセリフが多いのが麻雀マンガ。運不運や勝負のアヤが人生に似ているからでしょうか。片山まさゆき『打姫オバカミーコ』の「見えない人の手牌を読むより見えてる自分の手牌を失敗しないことの方が何倍も大事だ」は人生訓としても読めますし、神原則夫『西校ジャンバカ列伝 かほりさん』の「ドラのる生き方してるからな」なんてセリフにもシビれます。勝負所で運を摑むため日頃から公衆道徳や仁義をきっちり守っている女子高生雀士の生きざまを示すセリフですが、見習いたいと思います。  何かと先行き不透明な昨今、強いメッセージ性のあるセリフは受け入れられやすい。それで奮い立つのはいいことだと思います。ただ、それを丸ごと鵜呑みにしてしまうのは危険性もある。  その点、いしいひさいち『ののちゃん』の藤原先生のセリフは素晴らしい。例えば「『食べれる』じゃなくて『食べられる』が正しいんだよね」と言う生徒に「わざわざ正しいって言わなくちゃならないのはたいして正しくないからね」と言い放つ。そのまま東電や政府首脳に贈りたい至言です。  極めつきは、本宮ひろ志『まだ、生きてる』の主人公が吐いた「こうなったら…死ぬまで生きてやるか」。定年退職した男が家族に全財産を持って逃げられ、自殺にも失敗、そこで開き直ってのセリフです。本当に追い詰められたとき、ぜひ思い出してほしいですね。 【南 信長氏】 ’64年、大阪府生まれ。マンガ解説者。『朝日新聞』『月刊サーカス』などでマンガ評連載中。著書『現代マンガの冒険者たち』(NTT出版)。4月より『野性時代』にて新連載も開始予定 ― 人生に効く[漫画&アニメ]名セリフ集【5】 ―
現代マンガの冒険者たち

意外となかったマンガ作家論!

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