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COVIDー19、感染拡大! 日本の統計がすでに破綻している、これだけの理由

 新型コロナの感染拡大が止まらない! 一貫して科学者の視点から日本のコロナ対策のおかしさを指摘し続け、東京都の感染者数急増も的確に予想したコロラド博士こと牧田寛氏。8月18日に『誰が日本のコロナ禍を悪化させたのか』を上梓したばかりの牧田氏に、今日本が置かれている状況について緊急寄稿してもらった。

遂に米欧並みの感染状況となり新局面となった日本

 現在、東京都と神奈川県を中心に関東で始まった第5波エピデミックは、全国に拡大し未曾有の感染者数を記録しています。既にPCR検査能力は飽和し、新規感染者統計は八月に入り崩壊の可能性が高く感染状況を直接示す統計は既にありません。とくに関東と関西では、医療崩壊が進行中で社会機能の崩壊も始まっています。  日本政府は、既に手立てを失っており自宅療養(家で死んでくれ)政策を宣言し、既に東京都では、救急医療が機能を失いつつあります。  これまで筆者がハーバービジネスオンライン(HBOL) および日刊SPA! において再三再四指摘してきたように、本邦はきわめて稚拙なエピデミック対策を行ってきましたが、謎々効果(Factor X)によって欧州、北米、南米、西アジアに比してエピデミックは大幅に小規模なものに抑えられてきました。しかし謎々効果による抑制効果は、昨年春に感染者数比で米欧比1/1000程度であったものが1/100、1/10と減退して行き、筆者は謎々効果の崩壊を強く懸念し、指摘してきました。  6月に本邦で始まったδ株によるエピデミックSurgeは、7/1頃にはロックダウンなどの強力な介入無しに感染拡大を止める最後の機会を失っており、急激に拡大してゆきました。本邦の日毎新規感染者数は、7/29にはアジア平均を抜き、8/1には世界平均を抜いて、現在見かけ上は欧州平均に近い値です。  筆者は、5月末に統計の異常=第4波エピデミックSurgeの急な下げ止まりに気がつき8月はじめまでTwitterにて東京都の日毎新規感染者数を予測し、非常に高い的中率で好評でした。しかし8月8日迄に関東、関西ほか全国的に検査が飽和し、統計が崩壊していると判断し、予測を取りやめています。  筆者は、日毎新規感染者数が100万人あたり100人(100ppmピーピーエム)を越えると日常生活で感染拡大が目に見えて増えるため社会の機能が止まり始めると主張して来ましたが、本邦は既にそのような状態で、とくに状態の悪い東京都心部では百貨店でのクラスタ発生、鉄道事業者でのクラスタ発生など生じ、救急医療が機能不全、行政サービスの機能不全も不燃ゴミ回収の停止などという形で目に見えて拡大しています。  100ppmの日毎新規感染者が出ていると都市部では、通勤、通学などの日常生活でキャリア(ウイルスを持ちながら日常活動を行っている人)との接触を避けることが難しくなり、東京都の現状では、満員電車の各車両にキャリアが複数乗り合わせると考えられます。これは、通勤電車での感染拡大が報告された昨年4月のニューヨーク市と同じ状況です。  本邦を守ってきた謎々効果(Factor X)は、既に全国的に崩壊しています。本邦におけるCOVID-19エピデミックは、これまでと全く異なる局面となりました。これまでは、謎々効果によって生じてこなかったごくごく普通の日常生活における感染拡大が米欧と同様に生じているという事になります。
日本、韓国、台湾、中国、合衆国と全世界における百万人あたり日毎新規感染者数の推移(ppm,7日移動平均,片対数)2020/01/28-2021/08/14

日本、韓国、台湾、中国、合衆国、全世界における百万人あたり日毎新規感染者数の推移(ppm,7日移動平均,片対数)2020/01/28-2021/08/14 /片対数なので縦軸の一目盛りが10倍を意味する/出典:OWID

「謎々効果」の消滅

 本邦には、謎々効果(Factor X)という極めて強力なパンデミックからの守りがありました。この謎々効果についてはHBOLにて幾度も解説していますが、次のようなものです。 1) 地球上一部の領域ではCOVID-19パンデミックの威力が目に見えて低いこれを謎々効果とする 2) 謎々効果とは、理由は分からないが感染率(罹患率)が北米・南米・欧州・西アジアの1/10〜1/1000となることである 3) 日毎新規感染者数は、謎々効果によってSurgeが100ppm以下に抑えられる。但しSpikeによって一時的に100ppmを越えることはある 4) 謎々効果は、致命率(CFR)に直接影響しない。医療体制が同等であるならばCFRはほぼ同一となる 5. 謎々効果が有効であるのは、モンゴル、中国、アフガニスタン以東の東アジア・南アジアと大洋州およびアフリカ大陸の大部分である 6. インド亜大陸では抑制効果が1/10程度であり謎々効果は弱い(弱い謎々効果) 7. α株、δ株パンデミックで判明したが、日毎新規感染者数が連続して100ppmを越えると謎々効果は消滅する(インド、ネパール、モンゴル、マレーシア、インドネシア、日本) 8. 謎々効果消滅後、パンデミックの収束に十分成功すると謎々効果が復活する可能性がある(インド)  2020年の「秋の波」(季節性パンデミックSurge)が発生する直前のベースライン(基準線)を示していた昨年10月2日とδ株によるパンデミックSurgeが猛威を振るっている2021年8月14日における百万人あたり日毎新規感染者数の世界分布(ppm 7日移動平均)を地図上に色分けするとこの謎々効果の威力とその崩壊がよく分かります。  謎々効果は、α株パンデミックSurgeによって今年3月からモンゴルで崩壊が始まり、次いでδ株パンデミックSurgeによってインド亜大陸で崩壊、マレーシアと本邦においても典型的な謎々効果の崩壊が生じています。  8/14現在、東アジア・南アジアおよび大洋州での謎々効果崩壊国は、マレーシア、モンゴル、タイ、日本と考えられます。謎々効果の崩壊は、稚拙なパンデミック対策を行った国や政情不安国の特徴で、インドのように大規模ロックダウンのような強力な介入をしない限り回復しないでしょう。
謎々効果が現れている一例

謎々効果が現れている一例。百万人あたり日毎新規感染者数の世界分布(ppm 7日移動平均)2020/10/01/出典:OWID

崩壊する謎々効果

崩壊する謎々効果。百万人あたり日毎新規感染者数の世界分布(ppm 7日移動平均)2021/08/14/出典:OWID

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検査抑制でねじ曲がった統計。そしてその崩壊
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誰が日本のコロナ禍を悪化させたのか?

急速な感染拡大。医療崩壊。
科学者視点で徹底検証!

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