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危機を乗り越え「しらせ」 帰港 南極から帰りたて【フォトレポート】

 第53次南極観測隊を支援するため、昨年11月に東京港を出発した南極観測船「しらせ」が4月9日、東京晴海ふ頭に帰港した。出港後、豪州・フリーマントルを経由して昭和基地に向かったが、4mの氷と氷上に積もった2mの雪に行く手を阻まれ、航海は困難を極めた。
南極観測船しらせ

帰ってきた南極観測船「しらせ」

⇒【拡大画像】帰りたての南極観測船 「しらせ」【55枚】 https://nikkan-spa.jp/189533/120409_shirase_01  前後進を繰り返し砕氷を行う「ラミング」を2000回以上敢行したものの、1月、昭和基地沖への接岸を18年ぶりに断念。ヘリと雪上車によるピストン輸送で、観測器材、燃料、食料など、積載量の6割強に当たる約820トンの物資と、南極観測隊の交代人員78人の輸送を行った。  また今回の航海では本来2機まで搭載できるはずのヘリのうち、1機がオーバーホール中であったため、1機しか搭載していなかったという。ヘリの整備を担当した隊員は「ヘリは1台しかありませんでしたが、効率的な計画のおかげでなんとか任務を遂行することができました」と語った。  輸送任務を終え帰路についたしらせだが、2月13日、ラミングで後進した際も右舷に氷塊がぶつかり破損。トラブルにまたも見舞われる。一時は氷の中に閉じ込められ、越冬や救出部隊の派遣も検討されたものの、ここでもラミングを約1800回敢行し、自力で氷の海域を突破。その後も左舷のみで2万キロの復路を見事完走した。 ⇒【拡大画像】入港時の様子 https://nikkan-spa.jp/189533/120409_shirase_06 「しらせは世界最高クラスの砕氷船です。乗組員はヘリなどで救出できますが、しらせを助け出せる船は、ほぼ無いでしょう。『しらせ』を助けられるのは『しらせ』だけです(防衛省・副報道官)」と、かなり危機的な状況だったようだ。 「私は3回目の南極でした。艦内には食堂やレストルーム、床屋、喫煙所もあります。床屋といっても隊員同士で髪を切りあったりすることも多かったですね。日本に戻って?婚約者と会えたのが一番嬉しいです。4回目の南極は…その時になったら考えます」 「楽しみは食事でしたね。毎週水曜日にはステーキ、金曜日には海軍伝統のカレーです。皇帝ペンギンやアデリーペンギンも見ることができましたし、停泊しての作業中にクジラの群れが艦の10メートル付近まで近づいたこともありました。ただやっぱり寒かったですね。クレーンでの作業など担当したのですが、鼻毛が凍るほど寒かった(笑)」  隊員たちもそれぞれに貴重な体験を語ってくれた。 「これから艦の修理や整備を行い、例年通りならばまた11月にしらせで南極に向かうと思います。今は任務直後なので、艦内の詳しい様子をお見せすることはできませんが、出港の時には、より詳しく艦内を案内できますので、楽しみにしていてください(防衛省・副報道官)」  数々のトラブルを乗り越えて、無事帰港したしらせ。隊員たちは151日ぶりとなる家族との対面に、雪焼けした逞しい顔を綻ばせた。また、艦上では帰還を祝うセレモニーが行われ、杉本正彦海上幕僚長から隊員たちに厚い労いの言葉が送られた。  今回の大航海で、その能力の高さを遺憾なく発揮した、2代目しらせとその乗組員たち。今後の更なる活躍に期待しよう。 <取材・文・撮影/日刊SPA!取材班> ⇒【画像集】南極観測船 「しらせ」艦上設備 https://nikkan-spa.jp/189533/120409_shirase_27
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