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違法アップロードはどのような経路で流通しているのか

氾濫する不正コピーの流通経路とは  果たして、不正コピーはどのような経路をたどりネットを流通しているのだろうか。 「不正コピーの流通は、大きく分けてWeb上に圧縮形式でアップロードされているものと、P2P形式のもの、そしてYouTubeなどの動画共有サイトにコマやページごとにスキャンし動画形式になっているものの3種類がありますが、メインはやはりP2Pです」と語るのは、アニメやネットの裏事情に詳しいライター、久保内信行氏。  現在のP2Pは、Webから、トラッカーサイトを通じてP2P上で流通しているファイルを検索することができる「BitTorrent」が主流。そのため、作品によってはネットで検索すると上位に違法アップロードされた作品がヒットしてしまうこともあるという。  こうしてネット上を拡散した違法アップロード作品は、世界中でダウンロードされている。 「海外のオタクの間では『スキャンレーション』と呼ばれ、ポピュラーな存在です。中には、有志が勝手に現地語に翻訳したものすらある。これらは、海外の、日本の漫画の流通が行き届いてない地域の人たちによって拡散されていて、これらを通じて日本の最新コミックを見るのは海外のマニアの間ではポピュラーになっています。今年7月に違法アップロードサイト『OneManga』が全漫画データを削除したとき、海外利用者の間で大騒動になりました」(久保内氏)  こうした海外ファンたちの間では、違法アップロードサイトの規制などについて、「日本の文化を広めるチャンスを失った」などという声もある。  確かに、動画サイトなどに違法アップロードされたことで、世界的なヒットにつながった作品の例もある。  こうした背景もあり、大手出版社も漫画誌の電子配信に真剣に取り組み始めた。 「集英社は8月に『ジャンプSQ』をiPadで配信を開始しました。ユーザーの反応は概ね好評で、iPadのインフラは課金が容易で、こうした漫画の電子配信は、今後増えていくでしょう。ただ、ネット上で配信するにはユーザーの「無料で当たり前」という意識と課金システムが壁になるでしょう。不正コピーのほうが見つけるのも楽で使いやすい場合もありますから」(同)  本を解体してスキャンする、「自炊」がブームになっているように、書籍のデータ化も誰もが容易にできるようになった。  ただ、違法アップロード作品を「無料で読める」と喜ぶ人に考えてもらいたい。  違法アップロード作品が蔓延すれば、コミックの印税が主収入となる漫画家にとっては大打撃。作品を生み出すことすらもできなくなる。この無法状態が続けば、いつしか「違法アップロードされる作品」自体がこの世からなくなってしまうかもしれないのだ。
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勝手に翻訳した「スキャンレーション」の一例。 丁寧に編集され一見しただけでは通常の海外版と見分けがつかない。 このファイルは”翻訳者”のクレジットまである! 【P2P】 発売日前の作品も海外トレントサイト経由ですぐに不正コピー
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不正コピーファイルの1次放流先として選ばれやすい海外のBitTorrentを 扱うトラッカーサイト。ここからアップロードされた不正ファイルは、数日の うちに各国言語に翻訳され世界中に拡散されていくことが多い 【Web】 既刊すべてを詰め合わせた全巻セットから勝手翻訳版まで
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海外の日本漫画コミュニティサイトを中心にWebから直接ダウンロードする形式。 特に人気は有名な完結漫画の全巻を詰め合わせたファイルなど。 中にはリクエスト掲示板があるサイトまで 取材・文/SPA!デジタル調査チーム ― コミック[違法アップロード]無法地帯【2】 ―
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