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関電株主総会で「再稼働容認」、この選択は正しかったのか?

ギョルギー・ダロス,反原発

衆議院第二議員会館で講演を行うギョルギー・ダロス氏

 本日27日、大飯原発再稼働問題で注目が集まり、過去最多3842人の株主を集め、こちらも過去最長となる5時間32分にも及んだ関西電力の株主総会が行われた。  総会では、個人株主から大飯原発3、4号機の再稼働に反対する意見が出たりと、大荒れの状況になったが、最終的には原子力発電所の早期全廃を求める大阪市の株主提案も否決され、事実上「再稼働容認」が株主にも認められた形となった。  これに対して『原発-21世紀の不良資産 原子力への投資と東京電力福島第一原発事故』の著者、ギョルギー・ダロス氏はこう警告する。 「原発産業への投資を取り巻く現状を分析した結果、この分野への投資はリスクが非常に高いことが明らかになりました。今後も原発を維持しようとすれば、行政機関、証券会社、投資家、金融機関など、多方面にさらなる経済的マイナスが広がるでしょう」  原発事故後に東京電力の株価は9割減、社債の格付けは事故前のAAからB+にまで下がった。その他原発を所有する電力会社の株価も軒並み下落し、投資・融資先としての価値は下がり続けている。当初、事故処理にかかるコストは「最大で20兆円」との試算があったが、これに除染 費用などは含まれていない。住民への補償費用、廃炉や放射性廃棄物の管理にかかる費用など、実際にはどれだけかかるのか誰にも想像がつかない。 「原発が、いったん事故が起きれば資産をはるかに上回る損失をもたらすということを今回の事故で学んだはずです。それなのに、なぜ電力会社の株主たちはリスクの高い選択を支持するのでしょうか」  さらに、もし仮に今後の事故が回避できたとしても、原発を続けるにはさまざまな困難があるという。 「今後は安全対策強化への追加投資も必要になりますし、老朽化原発や放射性廃棄物の管理コストもどんどん増えていきます。原発の安全性に多くの人が不安を持っている現状では、再稼働や新規建設に反対する住民の対策費用や訴訟費用なども増えるでしょう。一方で政府からの財政面的な支援は削られ、規制が強化される傾向にあります。また、電力市場の自由化や固定価格買取制度の後押しを受けて、自然エネルギーのシェア拡大が進めば、原発の稼働率が下がっていくことも考えられます。」 関西電力,自然エレルギー,風力発電 一方で、世界の再生可能エネルギー投資額は約2570億ドルに達し(2011年)、今後も急成長が見込まれているが、日本は90億ドルで中国(510億ドル)や米国(480億ドル)に大きく遅れをとっている。「しかし、今からでも遅くありません」とダロス氏は語る。 「日本の技術力を持ってすれば、自然エネルギーはかつての自動車産業のような基幹産業になれる。原発依存をやめたほうが経済的にも得をするのです。できるだけ早く自然エネルギーへの投資を増やすのが賢い選択といえます(※参考「自然エネルギー革命シナリオ」)。環境負荷が低く、安全なエネルギーを持続的に得ることができる社会。今、電力会社の株主たちは、そんな日本の将来を決める特別な機会を手にしているのです」 【ギョルギー・ダロス】 グリーンピース・インターナショナル エネルギー投資シニアアドバイザー。IBM、シティバンクに勤務後、ボストン・コンサルティンググループの国際エネルギー事業担当、国連世界食糧計画(WFP)主席エコノミストなどを歴任 ●「自然エネルギー革命シナリオ」についての日刊SPA既報記事はこちら⇒https://nikkan-spa.jp/65298 ●要約版パンフレットはこちら⇒http://www.greenpeace.org/japan/Global/japan/pdf/er_summary.pdf <取材・文・撮影/北村土龍>
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