新興宗教にハマった夫と喧嘩中です。どう対応すればよいですか?【佐藤優のインテリジェンス人生相談】

【佐藤優のインテリジェンス人生相談】
“外務省のラスプーチン“と呼ばれた諜報のプロが、その経験をもとに、読者の悩みに答える!

◆相談者 匿名希望 パート勤務 女性 28歳

 私の旦那が1か月ほど前から変な新興宗教に入っていたことがわかりました。変な会報誌が届いて気づきました。旦那の姉が先に入っていたようで、以前から姉に連れられて占いや集会などに行っていたようです。私に内緒のまま。やめるように言っているのですが、まったく聞く耳を持ちません。

 非常に険悪なムードになり、1週間ぐらい前からお互い口をきかないようになり、寝るときの部屋は別々。最近は旦那がネットで「離婚」について調べていました。私としては離婚までは今のところ考えておりません。「まだ(宗教を)やめろと言うなら離婚する」と言われたら、私はどうするべきでしょうか?

◆佐藤優の回答

 私はキリスト教徒です。キリスト教も、もともとは新興宗教でした。どの既成宗教も、誕生当時は新興宗教で、世の中とさまざまな軋轢を起こしました。宗教の本質は、人間を救済することです。ですから、他人から見て「変な」新興宗教であっても、それで本人が救われたと心の底から確信しているならば、それで構わないと私は考えます。

 もっとも、そこには一つだけ、絶対に守らなくてはならないルールがあります。他人に危害を加えないことです。ここで難しいのは、他人に迷惑をかけること、他人を傷つけること、他人に危害を加えることの境界線があいまいで、虹のスペクトルのようになっていることです。あなたの御主人は、確実にあなたに迷惑をかけ、また傷つけています。しかし、客観的に見て、危害を加えているというまでには至っていません。ただし、お互いに口をきかない状態が一週間も続いているというのは、大爆発が起きる前兆です。ここで重要なのは、あなたの御主人がなぜ新興宗教に惹きつけられているかということです。それは、その宗教団体が御主人に信頼を与えているからです。人間の社会はきわめて複雑です。この複雑な社会を生きていくために、人間は信頼を必要とするのです。ドイツの社会学者ニクラス・ルーマンは信頼の意義についてこう述べています。

<信頼が社会的な複雑性を縮減するのは、信頼が情報不足を内的に保障された確かさで補いながら、手持ちの情報を過剰に利用し、行動予期を一般化するからである。そのさい、信頼は、同時並行的に形成される他の縮減の働き――例えば、法、組織、そして当然のことながら言語の働き――をつねに頼りにしているが、それらに還元されるわけではない。たしかに、信頼は、世界を成り立たせている唯一の基盤ではない。けれども、かなり複雑な社会が成立しなければ、高度に複雑でしかも構造化された世界を表象することはできないし、また信頼が存在しなければ、高度に複雑な社会を構成することはできないのである>(『信頼 社会的な複雑性の縮減メカニズム』176頁)

 少し難しい表現ですが、信頼がなければ、家族も会社も宗教団体も国家も成り立たないということです。あなたの御主人は、新興宗教団体を信頼するようになった結果、あなたに対する不信を強めています。こういう、信仰か家庭かを迫る宗教は、あまりよい宗教ではありません。一度、御主人の御両親を交えて、あなたの気持ちを率直に話してみましょう。家族を引き裂く傾向が強い宗教の場合、職場でトラブルを抱えることになる可能性も高いです。もっとも新興宗教に入る人の場合、3~6か月くらい経ったところで、最初の熱狂が必ず醒めます。そのときに御主人が冷静な判断をできるかが鍵になります。どうしてもその新興宗教に熱中する御主人が嫌ならば、協議離婚について真剣に考えるのも一案です。

【今回の教訓】
キリスト教も、元は新興宗教だった

◆募集
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【佐藤優】
1960年生まれ。1985年に外務省入省。在英、在ロシア連邦大使館、国際情報局分析第一課で活躍。2002年に背任の容疑で逮捕。『インテリジェンス人生相談』個人・社会編に続く第3弾、新刊『インテリジェンス人生相談<復興編>』が発売中!

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