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鉄ヲタが見かけた、独自の進化を遂げる沿線乗客

鉄ヲタが見かけた、独自の進化を遂げる沿線乗客  さて、ここまでさまざまな目撃談を紹介したが、一般人より電車事情に精通する鉄ヲタの人々に、各路線の乗客について聞いてみた。  まずは、女子メンバーで構成される建築家ユニット「SML」。自他共に認める中央線オタクの彼女たちに、沿線の生態を聞いた。 「中央線沿線は30代くらいの森ガールが多いんです。新宿、東京などオフィス街にも出やすいうえ、家賃も割安。それに沿線の人気タウンは夜が遅めで、帰宅時間前後に街がちょうど賑わっているから、独身でもあまり寂しくない。その中央線沿線カルチャーに染まって行き遅れ、結果としていつまでもほんわりと独身を続ける女性が多いですね」  もともと西荻窪などを中心にヒッピーカルチャーが盛んだった中央線沿線。その文化に染まっていき森ガールが増加するのには頷けるが、「ガール」と呼べない女性も多いとか……。  また、自らも中央線ユーザーである沿線文化人類学者の三善里沙子氏は、埼玉~東京と横浜~東京ラインの女性の相違について注目しているという。 「埼京線や東武東上線などは、ブランドロゴが目立つ派手なバッグやアクセサリーをつけている女性が多い。一方、東横線や田園都市線はさりげなくブランドバッグを持っているんです。これは多分、もともと埼玉は農地が多いせいか、ちょっと田舎っぽい派手好みの人が多いから。一方、横浜系の人は元町をはじめ山の手のスノッブさがある。ブランドバッグにしても、ロゴなどが目立たないシンプルなものを好んでいる結果なのでしょうか」  派手めの埼玉沿線か、スノッブな横浜沿線か。近郊に出かける際は、ぜひ注目してみたい。  そして、芸能マネジャーでありながら鉄ヲタのホリプロ・南田裕介氏は、乗客の観察も乗車時の楽しみの一つだという。 「りんかい線は東京ビッグサイトに近い国際展示場駅がある。そのため、この沿線に乗っていると、ビッグサイトでどんなイベントが開催されるかが一目瞭然。例えば鉄道のイベントだと、私のようにケータイに電車のシールを貼っている人がいたり、アニメ・萌え系イベントだと、コスプレ用の小さいキャリーケースを持っている」  日替わりで乗客層の違いを観察することで、イベントに行かずして雰囲気を楽しめそうだ。  また、競馬ファンの胸を熱くするのが、こちらのネタ。 「京王競馬場線の府中競馬正門前駅。これは府中競馬場のための駅で、競馬がない平日は2両編成なのですが、開催日は一気に8両編成になる。しかも臨時電車まで出す力の入れよう。競馬は終わる時間が正確に決まっているので、帰りの電車までバッチリ手配されている。例えばメーンレースが15時45分に終了する場合、ちょうどいい16時くらいから新宿駅直通の電車が走る。約30分間、自分たちのために走る電車というVIP気分を楽しめます」  マイナーな路線だが、覚えておいて損はない情報だ。 「あと、始発や終電の新幹線にはタレントが多い。最近は前日入りしないケースもあるし、若手だとグリーン席ではなく、指定席に座っていることも多いですね」  早朝の新幹線に乗る機会の多い人は、移動中に車内を散策してのタレント探しも一興か?
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鉄ヲタ南田氏のケータイには、大阪駅–新潟駅を結んで いた寝台特急列車つるぎのシールなどが貼ってあるSML
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’76年生まれの西牟田奈々氏と和田江身子氏が手を組む女性建築家ユニット。著書に三浦展氏共著『高円寺東京新女子街』(洋泉社)南田裕介氏
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ホリプロのマネジャーで鉄ヲタ。出演するDVD『鉄道6賢人イチ押し最強路線あいのり旅 ひたちなか海浜鉄道編』 が12/15に発売三善里沙子氏
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沿線文化人類学者。在学中から女性雑誌や旅行誌などの雑誌リポーターとして活躍。著書に『中央線なヒト』(小学館文庫)など 取材・文・撮影/電車内生態調査班 写真/産経新聞社 ― 沿線別[電車内のヤバい人間]図鑑【4】 ―
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