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孤立死を防止する現場では何が起きている?

孤立死を防止する現場では何が起きている? 「孤立死は年間50件ほど扱うのですが、そのうちの2割が20~30代です」と話すのは、新宿歌舞伎町を中心に活動する「寺ネット・サンガ」代表の中下大樹氏だ。こうした若年層は男性だと非正規社員、女性だと風俗嬢やキャバクラ嬢だという。 「カネの切れ目が縁の切れ目ではないですが、派遣切りに遭うなど社会に見捨てられたと感じている人が多い」(中下氏)  主な死因は、中下氏いわく「緩慢な自殺」とのことだが、どういうことなのか。 「薬物の過剰摂取が多いのですが、必ずしも本気で自殺したいわけではない。例えば、リストカッターのように、死のうとするけど本当は生きたい、みたいなところがある。ところが自暴自棄な生活で健康を害していたりして、うっかり命を落としてしまうんです。私の見立てでは、孤立死の割合は7対3で男性が多いが、新宿など繁華街を抱える街では若い女性のケースも増えています」(同)  一方、若年層の孤立死の波は団地にも及ぼうとしている。高齢者の孤立死防止に成果を上げている千葉県松戸市の常盤平団地自治会会長の中沢卓実氏は、次のように話す。 「孤独死が起きた部屋は事故物件として2年間は家賃が半額になるため、お金のない若者が入居しています。そして、前の入居者と同様の荒れた生活を送り、孤立死予備軍となっている」  まさに「負の連鎖」とも言える状況だが、若年層の孤立死を防ぐ手立てはないのか。 「究極的には若者が職を得て、安心して結婚できる社会になることだが、社会構造的にそれは厳しい。地域のサークル活動など、若者が社会に受け入れられているというムードを醸成していくしかないです」(中下氏) 【中沢卓実氏
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常盤平団地自治会会長として、同団地の孤独死問題に取り組む。声かけや見回り活動などによって、件数の半減化を実現中下大樹氏
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僧侶。寺ネット・サンガ代表、明治大学非常勤講師。孤立死や自殺、医療、葬儀など、命に関するさまざまなサービスを行う 取材・文/牧 隆文 山田文大 青山由佳 吉岡 俊 撮影/難波雄史(本誌) ― 人ごとじゃない![孤立死]の悪夢【5】 ―
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