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もし、残念な人が『論語』を読んだら【その5】

~ 『論語』と出会って、変わった人たち ~ もし38歳フリーターが『論語』を読んだら 順風満帆だったら古典にも 『論語』にも出会えなかった
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「気高く、強く、美しく」  そう書かれた名刺を差し出した菅野惠天さん。2年半前に失業し、現在、アルバイトをしながら就職活動を続けている。 「『論語』を最初に意識したのは中学のとき。国語の先生から『其れ恕か。己れの欲せざる所は人に施すこと勿かれ』の説明を受け、感銘を受けたのがきっかけです」  そして、大人になった菅野さんが『論語』と再会するのは、3度目の転職先を体調不良で退社しての療養中。偶然手にとった司馬遼太郎の『峠』、新渡戸稲造『武士道』と読み進み、『論語』へ。 「退職した会社はブラック企業で、顔面に麻痺が出るほど、まいっていました。でも、古典に触れているうちに体調がよくなったんです。『論語』も改めて読んで、やっぱりいいなぁと。一番好きな言葉は、やはり、『其れ恕か~』。大事なのは『恕』。相手を思いやり、察するという意味です。過去に勤めた会社の上司は皆、思いやりのないズルい人たちばかりでした」  今では、『論語』を枕元に置き、寝る前にパラパラとページをめくり一日の反省をするという。 「カチンときたり、ガックリした日、そのときの心持ちに合う言葉に触れると心穏やかに眠りにつくことができる。でも、『論語』をバイブルみたいにはしたくないんです。孔子も言っていますが、世の中バランスが大事。だから、合理主義、性悪説を説く韓非子の本を読んだりもしています」  それでもやはり、心に響くのは孔子の言葉。世間の風当たりを感じるにつけ、苦労人だった孔子に、我が身を重ねてしまうのか。 「でなきゃやってられないところもありますよね。論語でも『徳のある人物は孤立しない。必ず共鳴者が現れる』と。心の支えです」  とはいえ、「孔子が説く、親孝行だけはできていないから、耳が痛いですねえ」と菅野さん。 「まさかこの年でフリーターしていると思っていませんでしたから。でも、失業するまでまともに本を読んだこともなかったし、順風満帆だったら古典にも『論語』にも出会えなかった。ぐちゃぐちゃな人生かもしれないけど、見方を変えればラッキーかもしれません」
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「人を怒らせるのが得意だったんですが(笑)、『論語』に触れ、穏やかになったかな」と菅野さん
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今では古典を中心に年間300冊を読むという。愛読する論語本には付箋がビッシリ
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