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エロと笑いがミックスするキャットファイトの魅力

―[山田ゴメス]―
 生まれて初めて、キャットファイトに行ってみた。歴史としては案外古かったりもするようだが、ストリップほどの露出もなく、女子プロレスみたいに本格的な技の応酬を堪能できるわけでもない……。ゆえに、ここまでそれとなく敬遠し続けてきた。典型的な食わず嫌いというやつだ。じつのところ、今回も誘われちゃったからしかたなく……的な感じであった。でも、ぜっかく足を運んだからには、どんな客層の人たちが、いったいなにをどうやって楽しんでいるのか、見極めてみたいと思う。  9月14日(金)の午後7時。CPE(Cat・Panic・Entertainmentの略)という団体主催のキャットファイト・イベント「どきッ!女だらけのキャットファイト祭」が、新木場1stリングにて行われた。最前列席は10000円、立ち見席でも5000円(1ドリンク付き。撮影は自由、ただし動画は不可)という、決して安くはない入場料にもかかわらず、300人ほどのキャパシティである場内は、水増しなしの満員御礼だ。 ⇒物販の様子【画像】はコチラ
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 観客の年齢層は20〜50代といったところで幅広い。男性が9割以上を占めるのは、まあ予想通りだが、その顔ぶれを見渡してみると、とくにオタク臭が強いわけでもなく、女肌への渇望感で見開く目を血走らせている風でもない。強いて言うなら、プロレスマニアの好みがちなファッション(「国際プロレス」のロゴが入ったTシャツを着ていたり……)で身をかためる輩が少々目に付く程度で、客層の特色を傾向づけるのはむずかしい。  進行を務めるMC役は、名前を聞いたこともないお笑い芸人らしき男性2人で、開始前から観客をしきりに煽り、観客は観客で、またそれに俊敏で好意的なリアクションを飛ばし、場内は程良い熱気で包まれている。  第1試合。体脂肪率10%前後に違いない、身体能力の高そうな女性2人対2人(本職はアクション女優やスタントウーマンであるらしい)のタッグマッチが始まる。それなりにガチっぽいキックやパンチが、ほぼ寸止め状態で惜しげなく繰り出される。 ⇒リングの様子【画像】はコチラ
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「ああ、思った以上にきちんと訓練されてるんだなあ……」と、感心こそすれ、それでおしまい。正直、ココから醍醐味をほじくり出すことは、僕にはできない。できなかったから、思い切って周囲の席に座っている観客の幾人かをつかまえ、こう訊ねてみる。 ――あのぉ~……コレって、どこがおもしろいんですか? 「え! ダメ!? エロいじゃん! 俺、巨乳とかより筋肉質な女のほうが好みだからさぁ」(20代らしき金髪で細身の、この場には似つかわない草食系男性)  そうですか。好みなんだったらしょーがないですな……。 「いやいや、まだ前哨戦だし。これからだよ。キャットファイトのお楽しみは」(通っぽく腕組みをしながら、たまに「もっと右だ右!」などと野次を飛ばしていた30代後半らしきスーツ姿の男性)  わかりました。アナタの言葉を信じて、もうしばし辛抱してみることにします。1試合目のあとは、地下アイドルのミニライブ。基本としては、試合→ライブ→試合→ライブ……といったサンドウィッチ方式で、イベントは進んでいった。
キャットファイト

地下アイドルのミニライブも行われる

 第2試合は、女性オンリーの3人タッグマッチで、OLチックなYシャツ&紺色スカート姿の選手も混じった編成。さらにはスタッフがリングサイド席の観客に水鉄砲を配っている。雲行きが怪しくなってきた。ゴングが鳴る。四方から容赦なく飛んでくる水鉄砲から発射された水がリング上の女子たちを濡らし、ウエットな泥仕合、ならぬ水試合が展開される。脱力してしまうほどのくだらなさ……だが、チョットだけエロい。  さっきの通っぽい腕組みスーツの兄さんに、「これがいわゆるキャットファイトのお楽しみなんですね?」と、興奮気味の詰問口調で問いただすが、もはやファイターたちの濡れた股間や乳先に目が釘付け状態の彼は、返事を返してもくれない。 ⇒試合の様子【画像】はコチラ
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 試合はどんどん進んでいく。「スージーQ&水嶋かおりん vs 秋田犬(人間ダーツで有名な国内最強のM男優/世界最弱やられ放題レスラー)&プリティ太田(国内唯一の身長132cmのミゼットレスラー)」という試合では、もっと強力な脱力感に襲われる。もはやファイトというよりは小芝居だ。 「関節技・脚フェチ・金蹴り&握り潰し・悶絶くすぐり・顔面踏み付け・股間窒息顔面土手責めなど悪の限りを尽くす試合」  そんな謳い文句に遜色ない、女王様然とした女子タッグチームと上記男子タッグチームの、プロレスを辛うじてベースとした不毛な公開SMショーが、真剣に真剣に、演じられる。思わず失笑が漏れてしまうが、やはりチョットだけエロくて、もやもやする。とはいえ、フル勃起には、ほど遠い。意を決して、今度は最前列でヒートするVIP客の幾人かに話を聞いてみる。 ――あのぉ~……コレだとストリップのほうが、まだエロいと思うんですけど? 「なに言ってんの! ストリップもどうせその場でヌケないんだからさ、だったらエロに笑いが加わったほうがおもしろいっしょ!!」(最前列でべろべろに酔っ払った風の赤ら顔で、やたらテンションの高い掛け声をかけまくっていた、20代の黒い皮チョッキを着たフリーター風男性) 「昔、神社あたりで人間ポンプだとかヘビ女だとかの見世物小屋があったじゃない? そういうのと同じ匂いの下世話感があるんだよね。キチンと期待を裏切ってくれるのがたまらない、みたいな……?」(最前列でじっと脚を組みながら、たまにうんうんうなずきながら試合を俯瞰的に見つめていた40代くらいの地味なお父さん風男性) ⇒試合の様子【画像】はコチラ
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 なるほど。ポイントは、エロからもっともかけ離れた位置にあるはずの“笑い”(“失笑”もおおいに含む)と、本来ならもっともエロの身近になければならないはずの“下世話”(もっと断言するなら“下品さ”)であるようだ。これらの相反する要素がミスマッチ的に同居する、乱暴なフレイバー感こそがキャットファイトの魅力なのかもしれない。<取材・文・撮影/山田ゴメス> 【山田ゴメス】 1962年大阪府生まれ。マルチライター。エロからファッション、音楽&美術評論まで幅広く精通。西紋啓詞名義でイラストレーターとしても活躍。日刊SPA!ではブログ「50にして未だ不惑に到らず!」(https://nikkan-spa.jp/gomesu)も配信中。現在「解決!ナイナイアンサー」(日本テレビ系列)(http://www.ntv.co.jp/99answer/)に“クセ者相談員”として出演。『クレヨンしんちゃん たのしいお仕事図鑑』(双葉社)も好評発売中!
大阪府生まれ。年齢非公開。関西大学経済学部卒業後、大手画材屋勤務を経てフリーランスに。エロからファッション・学年誌・音楽&美術評論・人工衛星・AI、さらには漫画原作…まで、記名・無記名、紙・ネットを問わず、偏った幅広さを持ち味としながら、草野球をこよなく愛し、年間80試合以上に出場するライター兼コラムニスト&イラストレーターであり、「ネットニュースパトローラー(NNP)」の肩書きも併せ持つ。『「モテ」と「非モテ」の脳科学~おじさんの恋はなぜ報われないのか~』(ワニブックスPLUS新書)ほか、著書は覆面のものを含めると50冊を超える。保有資格は「HSP(ハイリー・センシテブ・パーソンズ)カウンセラー」「温泉マイスター」「合コンマスター」など
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