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世界の「タメシガキ」2000枚!珍コレクターの野望

 ペンの書き心地を確かめるためにお客さんが何気なく生み出した抽象的な線や文字、イラストや記号がアートになる……ありそうでなかった発想です。  試し書きコレクターの寺井広樹さんは、「一日三タメシガキ」をモットーに、5年間で50か国の文房具コーナーの試し書き、約2000枚を収集したそうで、今も継続中です。フランスは漫画調でカラフル、イタリアは線がメインだけれどカーブの繊細な美しいライン、エチオピアは筆圧が高いのか紙が破れていたり……。  寺井さんが試し書きアートに出合ったのは、07年。会社を辞め、世界放浪の旅に出た際、ベルギーの文房具店でカラフルなペンの文字に紳士や花が流れるような筆圧で描かれた試し書きに出合い、「これはアートだ!」と衝撃を受け、「捨てるのはもったいない」と店主に頼み込んで譲ってもらったのが始まりだそう。  ひとによってはただのゴミ。ですが、寺井さんは試し書きを「無意識のアート」と語ります。寺井さんの知り合いにも、マグネットや降車ボタン、たいやき魚拓、食虫植物、人食い映画、ひっつき虫など珍しいコレクション=「珍コレ」をしている人がいるそう。しかも、収集には人知れない苦労があるようで、たとえば、マグネットの蒐集家曰く、「磁器の強いマグネットが部屋中にあると時計も狂うし、体調を崩すこともある」そうです。寺井さん自身も「猫を飼っているわけではないのですが、試し書きを保存するのに猫のトイレ砂を活用しています」。それでも集めるのをやめられないんだとか。  いずれは「タメシガキによる文化人類学を打ち立てたい」と語る寺井さんのコレクションは、「世界タメシガキ博覧会」と題して表参道の文房具カフェにて10月2日まで開催中。今回の博覧会の見どころを寺井さんは「試し書きにそれぞれのお国柄、国民性が表れているところ」と語ります。世界各国の一般人が、結集(?)して生み出した偶然のアートをぜひ堪能してみてはいかがでしょう。 ⇒実際の各国試し書き【画像】はコチラ
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【寺井広樹氏】 1980年生まれ。試し書きコレクターの顔を持つ一方で、離婚式プランナーとしても注目されている。「結婚式があってなぜ離婚式がないのか」という疑問をもとに、別れを“再出発”としてポジティブに考えるための儀式・離婚式のサービスを2009年に開始。過去に140組以上の離婚式をプロデュース。「親族や友人の前で夫婦が離婚に至った経緯を説明する」「最後の共同作業として夫婦が結婚指輪をハンマーでたたき割る」など、大胆かつ斬新なアイデアが話題を呼び、海外からの取材も多数受けている ●世界タメシガキ博覧会 http://tameshigaki.org/ ●文房具カフェ http://www.bun-cafe.com/ <取材・文/おはつ>
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