クルマ好きのためのマニアックなエコカーが登場【後編】

VWから登場した軽自動車並みに小さいクルマのup!。見た目のかわいさと値段の安さ、そして輸入車ではダントツの燃費の良さと三拍子そろったドイツの超小型節約兵器だ。対するは、もはや説明不要の世界の燃費皇帝プリウスと新型ミラージュ。VWの末っ子に胸を貸してやりました【後編】 ⇒【前編】はこちら MJブロンディ=文 Text by Shimizu Souichi 池之平昌信=写真 Photographs by Ikenohira Masanobu  横浜のみなとみらい地区と首都高を、プリウス、up!、新型三菱ミラージュの3台連なって合計20kmばかり走った日独節約対決の結果は……。 【優勝】プリウス:29.1km/リットル 【2位】up!:19.8km/リットル 【3位】ミラージュ:18.7km/リットル
up!

トータルコストを考えると、燃費皇帝やup!に比べてダントツ車両価格が安いミラージュの勝ち。まあ、この3車に絞ってクルマの購入を検討することはないでしょうが……

 さすがプリウス! 時速80km以下の低速環境では、またしても爆発的な強さを見せつけた。昨年末のマイナーチェンジでサスペンションの改良を受け、乗り心地も相当良くなり、もはや雰囲気は完全に高級車。世界を制した燃費皇帝の威厳すら漂っている。ポッと出のup!などひとひねりだぜ、ワッハッハ!!  一方のミラージュは、ドイツ車に無念の敗北。車重はup!より軽いし、ミッションも燃費に有利なCVTなんだけど、なぜ負けたのか。こんなにボディがペナペナなのに! 正直、乗ってると貧乏な気分になってきて、「これなら軽のほうがいいんでは」と思うのですが、しかしup!に比べれば室内はずっと広いです。CVTは街中でガックンとならずスムーズです。ガソリンもレギュラーです。そして値段は99万8000円から! トータルコストなら勝つ。  そしてup!。このクルマのウリは、実は燃費ではない。 up! ひとつは、小型車でありながら、「ぶつからないクルマ」を標準装備していること。時速30km以下なら、脇見運転してても自動ブレーキで止まってくれる。こんな小型車は他にない!  もうひとつは、市街地でノロノロ走るなら国産車のほうが絶対いいが、高速道路を飛ばすなら、up!が絶対いいということだ。  up!は、信号の多い市街地だと、変速のたびにセミATがガックンとなって、慣れるまで「なにこれ?」と思うだろう。が、高速道路に入れば、アウトバーン育ちだけに、プリウスやミラージュを相手にしない。飛ばせば勝ちだということだ。  最高速は170km。そこまで出してもまったく安定しているし、音も静か。なんせ飛ばすのが気持ちいい。これは国産ケチケチ軍団にはない魅力である。  スタイルも機能的な美しさがある。さすがガイシャ。  結局のところこのクルマ、国産車とはバッティングしない、クルマ好きのためのマニアックなエコカーなのでした。 【結論】 これを読んで、「カミさんの足に良さそうだ」と思った方、悪いこと言わないから、ポロかゴルフにしておきなさい。up!はクルママニア向けです。主婦には難関です。高速飛ばすこともないだろうし ― ドイツが誇る超小型節約兵器襲来!【2】 ―
1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中
おすすめ記事