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現状打破はアメリカに戦線布告!? 【藤原敬之×飯田泰之】Vol.3

【週刊チキーーダ!番外編】藤原敬之×飯田泰之対談 ― 日本人はなぜ、投資と戦争が下手なのか? Vol.3 ― ファンド・マネージャーとして、累計5000億円を運用してきた藤原敬之氏が、「波多野聖」名義で著した『銭の戦争』。この歴史経済小説は、エコノミストの飯田泰之もお気に入り。ということで、本誌『週刊SPA!』連載「週刊チキーーダ!」で、あいまみえた2人。「お金持ちになるためには?」がテーマの対談だったが、緊縮財政・アンチデフレ・清貧嫌い・高橋是清ヲタ・歴史好きという共通点から、話はあっちこっちで盛り上がり。そのほぼ、全文を「週刊チキーーダ!番外編」として、紹介する。 ⇒Vol.2「グローバル化できない日本人」
https://nikkan-spa.jp/313278
藤原:国民性という話で、私は「日本人ってなんなんだろう」という疑問を抱き続けてるんですよ。なぜ、日本人はこんなに投資が下手なのか?と。実を言うと、戦争も下手ですよね。投資も下手で、戦争も下手。その一番の理由は、自分たちというのを謙虚に考え、そして他者を意識することができない。これが一番大きいんじゃないかと思っています。 飯田:戦争も、そして投資もそうだと思うんですけれども、最終目標を決めない、決められないですよね。大東亜戦争が典型ですが、日清、日露、そして第一次世界大戦の参戦も最終的な作戦目標がない。もちろん例えば旅順をとるといった目先の目標はあるけれど、清に勝つとどうなるか?というビジョンがない。 藤原:例えば、アメリカを征服してどうするんだ、とかね。
飯田泰之

アメリカに勝っていたら逆に困ったのではないか(笑)

飯田:どうするつもりだったんだんでしょうね。ホント、勝ったら逆に困るんじゃないかと(笑)。 藤原:アメリカ征服して、アメリカ人に日本語を覚えさせるつもりだったのか? それができると思っていたのか?と(笑)。やっぱり大きなビジョンなり哲学なり、マクロ的な意識みたいなのがないんですよね。しかし、今から意識を変えろ!といっても難しい。日本という国自体、革命を経験したことがなく、何かを徹底的に変えたという経験がないわけですから、自己革命をするのは至難の業。重要なのは、変わらない中でどう強くしていくかっていうことですよね。 ◆中国を中心とする“帝国主義的資本主義”の時代に日本は? 藤原:飯田さんにもお聞きしたいのは、僕自身、リーマンショックというのは、語られている以上のインパクトをもって世界経済のありようを変えたと思うんです。日本のバブル崩壊は不動産、建設、ノンバンクという三業態がバランスシート調整を起こしたわけですが、リーマンショックの後に起こったのは、アメリカの個人の家庭のバランスシート調整です。つまり、第二次世界大戦以降の世界経済の成長の核であったアメリカの個人消費が崩壊したということです。 アメリカの力が相対的に落ちている中、中国の帝国主義的資本主義が主流になっていく。帝国主義経済は何かというと、俺のものは俺のもの、お前のものは俺のものっていう世界。じゃあ、日本はどうこれに対応していくのか? もう一つ、ヨーロッパもアメリカもデフレです。歴史的に見ても、先進していく国は、バブルがあり、それが崩壊し、デフレになる。そして、そのデフレは常に戦争によって解消されてきた。では、今、どこでどう戦争するのか?と。つまり、今まで突きつけられたことのない命題に直面しているんです。この難題について、今のところ僕にも解はありません。 飯田:まずはリーマンショックのお話ですが、アメリカのバブル崩壊で、グローバル・インバランスによって世界中の貿易黒字をアメリカ国民の浪費が作ってくれるような時代が終わったわけですが、これと非常に似ていることが、近いところでは1929年の世界恐慌、そしてさかのぼれば、19世紀後半のビクトリア朝にも起きているんですね。29年の恐慌は戦争が最終的解決でしたが、実は戦争をしなくても、いわゆる極端なケインズ主義というのと分配主義という方法がある。 藤原:ですよね。だって高橋是清はやったわけですもんね、それを。 飯田:そうなんです。高橋是清が日本で一番の成功モデルをつくったのにもかかわらず、そのあと見習わない。太平洋戦争のときも同様で、世界で最初に機動艦隊を編成したのに、なぜ、それを活かさないのか、と。 藤原:そうですよね。何で、戦艦大和を作らなきゃいけなかったのか、と(笑)。そこなんですよ。 飯田:中型空母三隻、作っておけばよかったのに。 藤原:自分たちでストラテジーを大きく革命的に変えてるのに、なんなんでしょうね、これは。本当に不思議です。 飯田:資本主義経済の融通無碍さは何かしら形を変えながらも生き残り、アメリカを中心とした資本主義が今までどおりの成長を遂げるとは、僕自身、思ってはいません。でも、今の状況下で日本にとって一番のパートナーになり得る国はどこかといったら、いまもなおアメリカしかないと思うんですよ。その意味で、僕はもっと日本はアメリカの味方にならなければいけないと思う。 藤原:おっしゃるとおりです。 飯田:アメリカも嫌なところはたくさんあります。というよりも褒めるところが見つからないくらい…….でも、よく考えてみてください、と。中国とアメリカ、どっちがいいですか?と。この問いの答えに迷う必要はないと思うんです。
藤原敬之

アメリカに宣戦布告して、30分で無条件降伏するんです(笑)

藤原:洗練さも寛容さも持ち合わせていない人たちを相手にするほど、大変なことはありません。過去の日本も、そうは言っても寛容なそれなりに洗練された人間たちに負けて支配されたから助かったようなものですからね。先日、ある投資顧問会社の社長さんとお話ししながら、現状の最終的な打開策は?と問われた時に思ったのは、もし自分が総理大臣になったら、憲法改正を可能にして日本に交戦権をもたせる。そして、いざとなったらアメリカに宣戦布告するしかないな、って思ったんですよ。 飯田:もう一回、占領してもらうっていうことですか。 藤原:そうです。そして30分で無条件降伏するの(笑)。それで今度は、日本を51番目の州にしてもらうか、あるいは、アメリカ領日本にしてもらう。ここに住む人間にとっての最大多数の最大幸福はそこで得られると思うんです。 飯田:中国にやられるぐらいだったらっていうことですよね。そのお話で思いだすのは、中国の戦国時代の宋の国です。宋は絶対に同盟を裏切らない国として有名だったんです。あるとき、楚という国が宋を攻めてきたとき、晋は宋と同盟を結んでいたにもかかわらず、宋を守ってあげなかった。そうしたら、「あんなに尽くしてきた宋を見捨てた」と、晋に国際社会から非難が集中し、晋から同盟国がすべて離れることになりました。日本も宋のようにアメリカの一番の同盟国であるっていうのをもっと態度で示すべきだと思うんですよね。 【藤原敬之】 1959年、大阪府出身。一橋大学法学部卒業後、農林中央金庫に入庫し、国内および米国指株式を運用。移行、野村投資顧問(現野村アセットマネジメント)、クレディ・スイス投資顧問(現アバディーン投信投資顧問)、日興アセットマネジメントなどで、ファンド・マネージャーとして活躍。運用した額は累計で5000億円。著書に『日本人はなぜ株で損をするのか?』(文春新書)、波多野聖名義で、小説『銭の戦争』『疑獄小説帝人事件』(扶桑社)がある。 【飯田泰之】 1975年、東京都出身。東京大学経済学部卒業、同大学大学院博士課程単位取得中退。駒澤大学経済学部准教授。著書に『脱貧困の経済学』(共著・ちくま文庫)、『ゼロから学ぶ経済政策 日本を幸福にする経済政策のつくり方』(角川oneテーマ21)『世界一シンプルな経済入門 経済は損得で理解しろ!』『飯田のミクロ 新しい経済学の教科書』(光文社新書) <構成/鈴木靖子 撮影/山川修一>
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