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不便さやリスクを抱えてまで節電する必要はない!

― [やりすぎ節電]トホホ白書【10】 ―
飯田哲也

飯田哲也氏 1959年生まれ。NPO法人「環境エネルギー政策研究所」所長。著書『北欧のエネルギーデモクラシー』ほか。新刊『電力不足のウソ』(宝島社)が8月20日発売予定

テレビや新聞は“電力不安説”をまことしやかに報じていますが、需要側と供給側、それぞれが適切な対応を取れば今夏も電気は絶対に足りると断言できます。  まず需要側である企業や一般家庭では、平日の電力需要のピーク帯に照準を絞った効果的な節電をしていけば、東電管内だけでも500万kW規模の節電が可能。  一方、供給側である電力会社は活用されていない自家発電、いわゆる埋蔵電力を積極的に活用すればいい。埋蔵電力は日本全体で約5400万kWあり、年間稼働率は約50%。東京電力管内では約1300万kWあり、稼働率は約46%。昨年のピーク需要期の8月でも稼働率は約58%にすぎず、控えめに考えてもピーク時間帯でも10~20%は利用でき、東電管内でも130万~260万kWは埋蔵電力の掘り起こしが可能でしょう。  そもそも東京電力の火力・水力発電所は順調に復旧し、揚水発電を含めれば供給能力はもう6000万kW超。観測史上最悪の猛暑で節電ブームでもなかった昨夏でさえ最大電力量は6000万kW弱で、十分にカバーできるはずです。  浜岡原発停止以後、“電力不安説”が広まったのは、浜岡以外の原発を止めないためのプロパガンダのように思えてなりません。原発を止めると電力が供給不足になるという根強い妄想的な思い込みがあり、だから政府や東電は節電節電と呼びかけている。  また、経産省が電力使用制限令を発動しましたが、「15%削減」という目標を達成することだけに必死になるあまり、もっと効果的かつ合理的なやり方があるにもかかわらず、“談合的・無目的的な節電”になってしまっている。これでは徒労感が募るばかりでしょう。  余談ですが電力需要のピーク対策という側面から考えると、夜間の節電は無意味。節電自体はいいことですが、生活の不便さ、熱中症のリスク、交通安全面のリスクなどが増すのと引き換えにしてまでやる必要はありませんよ。 【飯田哲也氏】 1959年生まれ。NPO法人「環境エネルギー政策研究所」所長。著書『北欧のエネルギーデモクラシー』ほか。新刊『電力不足のウソ』(宝島社)が8月20日発売予定
原発社会からの離脱

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