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事故多発!中国高速鉄道に乗った日本人の話

6月末、北京―上海間を5時間で結ぶ高速鉄道がついに開業した。開発には、日本や欧州が技術提供をしているが、中国鉄道省は「独自開発」を強調し、米国などで特許申請する構えを見せるなど、国際問題へと発展しつつある。  中国のこうした強硬な姿勢に対し、中国事情に詳しいジャーナリストの富坂聰氏はこう語る。 「北京上海路線の開通は、もともとの工期を1年も短縮し、7月1日の結党90周年に無理やり間に合わせたもの。それが、外国の技術の真似では人民に対して格好がつかない。だから国際社会の批判を承知で特許を申請したのでは」 一方、中国では同路線以外でも、各地で高速鉄道の建設・開業が相次いでいる。しかし、その評判は決して高くはないようだ。広州市在住の日系運送会社勤務・山下卓也さん(仮名・34歳)は、今年2月、開通したばかりの広州―珠海間の高速鉄道を利用した。 「バスで2時間半かかる広州市と珠海市を30分で結ぶとのことで、利用してみました。しかし、開業から1か月以上たっていたにもかかわらず、鉄道の公式サイトにも地図にも駅の場所が載ってない。仕方なくタクシーで向かったのですが、20分かけてたどり着いたのは荒野のど真ん中。さらに広州に到着しても市内中心部に出るまで地下鉄を乗り継いで40分もかかった。結局、乗り換えもなく、運賃も安いバスとトータルの時間も変わらない。本末転倒ですよ」  さらに大きな問題は、運用する鉄道員・乗客の資質の問題だ。開業から4年が過ぎた広州―深圳間の高速鉄道を通勤で利用する深圳市の会社員・塚本真弓さん(仮名・29歳)の話。 「中国の高速鉄道は、到着直前にならないとホームに入れないんです。にもかかわらず、鉄道が遅延した場合、回復運転のために各駅の停車時間が短縮される。ひどいときは20秒くらいで扉が閉まってしまう。私がいつも利用する1等席は一番遠い1号車にあり、停車時間が短い場合、荷物を抱えて猛ダッシュするハメになるんです。しかも間一髪で間に合ったとしても、自分の席にはほかの人が座っていて、『ここは俺の席だ』と譲らない。中国では指定席の概念があまりないですからね。仕方なく車掌を呼ぶと、その男のほか、1等席にいた大半の客が2等席の切符しか持っておらず、ぞろぞろと退散する始末。毎日の通勤でこの調子ですから、心底、疲れます……」  さすがの中国も、日本の鉄道が誇るソフト面まではパクれないということか。2020年まで全国で進められることになっている高速鉄道網計画について、前出の富坂氏はこう解説する。 「そもそも高速鉄道路線の多くは必要性が疑問視されています。北京―上海間も、22時前に北京を出発し、翌朝9時に上海に到着する夜行列車があった。急ぐ人は飛行機を利用するので、5時間は相当、中途半端です。中国で進む高速鉄道網計画は、先進国としての威信を得たい中国の見栄にすぎず、人民の需要とかけ離れている。一大国家事業として15年もの歳月と巨費をかけて完成しながら『役立たず』と非難されている三峡ダムの二の舞いになることは必至です」  高速鉄道は役人以外、誰も幸せにならないようである。 <高速鉄道珍事件簿> 各地で開業が進む高速鉄道線には、次々とハイテク車両が
投入されている。一方、事件事故は相変わらずのようで……。 ◆隠れタバコで緊急停車 上海から北京に向かっていた列車で、乗客
が喫煙。火災報知器が反応したため停車 ◆停車中の列車が爆発 広州南駅で武漢への出発を待っていた列車
が突如、爆発。乗客1000人が緊急避難した ◆線路の台座部が倒壊 寧波と杭州を結ぶ高速鉄道の建設現場が
突然、倒壊。鉄筋の強度不足が原因だという ◆偽コンクリでおから工事 武漢−広州線の橋脚に、強度不足のコンクリート
が使用されていたことが開通後に判明 ◆備品持ち去り続出 鄭州−西安路線で、トイレ紙や脱出用ハンマー
まで大量の備品が持ち去られる事件が 取材・文/奥窪優木 【中華人民毒報】 行くのはコワいけど覗き見したい―驚愕情報を現地から即出し SPA!獨家報導 vol.158 高速鉄道の裏側編
1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。2008年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などに寄稿しながら、「国家の政策や国際的事象が末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに地道な取材活動を行っている。2016年に他に先駆けて『週刊SPA!』誌上で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論の対象となり、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社刊)など。最新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社刊)発売

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