日本のエネルギー事業が外国企業に奪われる

原発再稼働の是非が議論されるなか、日本の技術者によって新たなエネルギーの開発が進んでいる。太陽光や風力だけではない、日本には知られざる「国産資源」がまだまだ存在する。我が国は、実は資源大国だったのだ!! ◆「新エネルギー」と認められず開発補助金がつかない  前回紹介した新資源CBM(https://nikkan-spa.jp/359918)だが、問題も山積みだ。北海道大学大学院工学研究科で資源システムを研究する大賀光太郎助教はこう語る。
スラッド炭田の採掘現場

CBM先進国、オーストラリア・クイーンズランド州スラッド炭田の採掘現場

「いちばんの課題は掘削コスト。カナダではボーリング孔を1本掘るのに3000万円で済みますが、日本では1億円くらいかかってしまいます」  もう一つは、調査費用がないということ。日本では、CBMの精密な埋蔵量調査はまだ行われていない。それがなければ、企業もなかなか開発には乗り出せない。  大賀助教は、石狩炭田のなかにある夕張市に開発モデル鉱区を設定している。そのシミュレーションによると、「鉱区面積2.8平方キロメートル、600m間隔で21本の掘削をする。世界屈指のCBM包蔵量25立方メートル/tを誇る炭層から、約5億立方メートルを取り出せる」という。  これが実証されれば、資源メジャーや地元の北海道ガス、北海道電力なども放ってはおかないだろう。ところがその実証に必要な資金がない。
大賀光太郎氏

大賀光太郎氏

「21本すべてをやろうと思ったら、80億円ものお金がかかります。最初の1~2本を掘るだけの初期段階でも10億円は必要です」  日本の資源メジャーもCBMに関心をもっていないわけではないが、精密な調査が行われていない現状では、関わりを持とうとしていないようだ。  では、国はどうなのか。経済産業省が’02~’07年に、この事業を「二酸化炭素固定化・有効利用技術等対策事業」として助成したことがある。それで石狩炭田のおおよその埋蔵量などがわかったのだが、以後は国からの本格的開発への支援はない。 「CBMは、新エネルギーや再生可能エネルギーには分類されていません。石炭の中の天然ガスですから、どちらかというと『旧エネルギー』という扱いです。ですから、国からの開発助成がつかないんです。石炭・石油火力よりもずっとクリーンなエネルギーなのですが……」  CBMは、数少ない貴重な国産資源。これからの日本のエネルギー戦略にとっても重要だ。 「近い将来、資源輸出国が自国での消費に資源を回すため、日本は資源に困るはずだと予測しています。実際、インドネシアは石油の輸出をやめて自国消費用に回すようになりました。いつまで資源を外国に頼っていけるかはわかりません。今のうちに、自前の資源に目を向けようと訴えたい」  現在、オーストラリアの掘削企業が大賀助教の計画に関心を示しているという。国内企業が二の足を踏んでいるうちに、外国企業に日本のエネルギー事業を奪われてしまうかもしれない!? 【大賀光太郎氏】 北海道大学大学院助教。炭層ガス、ガスハイドレート、二酸化炭素の炭層固定、岩盤内のガス挙動など、幅広い研究を続けている ― 2013年 日本は資源国になる!!【2】 ―
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