カーライフ

笹子トンネル事故でクルマの加速力の重要性を再確認【下流自動車評論家・マリオ高野】

 あまり注目されていませんが、今、スバルのクルマが地味に好評を博しております。11月に登場した新型フォレスターは発売から1か月で目標の4倍を上回る8000台以上を受注しました。ハイブリッドでも超低燃費エコカーでもなく、玄人筋からデザインが良いと評価されているワケでもないクルマとしては驚異的といえるでしょう。守旧派のクルママニアからは「肥大化して嫌いになった」と言われがちなレガシィも北米では大人気。エントリー車のインプレッサにおいては、実用的な1.6/2.0リッターのNAエンジン搭載グレードが堅調に売れ続けており、XVというインプレッサの車高を上げてSUV風に仕立てたニューモデルは、スバルとしては異例にもオシャレ玄人筋から絶賛されるなど、クリーンヒットを連続しているのです。  インプレッサというクルマは、中央道・笹子トンネルの天井板崩落事故から生還したことでも一部で大変な話題となりました。ネット上では「運動性能が高かったおかげだ!」、「さすが走りのスバル!」などと賞賛する声が飛び交い、それを否定し糾弾する声もまた大噴出。富士重工業(スバル)自身が「たまたまスバル車だったというだけです」と沈静化を促すコメントを発表したほどでした。  あの事故からの生還劇については、紙一重の偶然が重なったことが最大の要因であるように思いますが、運動性能と操縦性の高いクルマがイザという場面で危機を回避して、乗員の命を守ってくれることは間違いありません。自分も、あの事故から生還したのと同じ型のインプレッサに19年間乗っていますが、「このクルマじゃなかったら死んでたな」と思えるような、クルマのおかげで危機を回避できたという経験は数知れずあります。  どういう性能のおかげで危機を回避できたのかを具体的に挙げると、「すごい加速力」と「思い通りに動いてくれる扱いやすさ」と「急ブレーキを踏んでもパニックにならない安定性」になるでしょうか。最近流行りのエコカーばかり乗っていると、パワーとかスピードとか、○○kmでカーブを曲がっても怖くない安定感などの、昔からクルマ好きが喜ぶ類いの性能はもうどうでもいいんじゃないかと思ってしまいますが、やはりクルマにはスポーツカー的な運動性能が備わっているほうが良いと思い直しました。人間でも、運動神経が悪い人より良い人のほうが物理的な危機を回避しやすいのと同じです。  日本の自動車メーカーのクルマは、どんなに安い物でもぶつかったときのボディの安全性は高いレベルにありますが、運動性能については優先順位を下げているクルマが少なくありません。燃費を最優先に追求したエコカーや、室内の居住性や使い勝手の良さをウリとする実用車やミニバンの中には、イザという時に危機を回避できなさそうに思えるクルマが多いです。そういうクルマに乗るユーザーの多くはスピードを出さないし、激しい走りをすることもないので問題にはならないのですが、まさかの場面に遭遇したときを考えると不安が残ります。  その点、スバルは自社で開発するすべてのクルマにスポーツカー的な運動性能を与えている数少ない日本車メーカーの一つ(他にはマツダぐらい)で、今度の新型フォレスターにも、本来はこのクラスのSUVには必要のない(過剰な)運動性能を与え、ボディを大型化しても運転席からの視界を良くするなど、危機回避性能を高めることに余念がありません。  DITと呼ばれるターボエンジンは自主規制値いっぱいの280馬力を発揮し、その大パワーを持て余すことなく路面に伝えるサスペンションや4WDシステムのおかげで、悪天候時でも安心してブッ飛ばせる性能を持っています。ターボエンジンではないグレードも運動性能はハイレベルにありますが、やはりイザという時に危険な場所からコンマ1秒でも速く脱するには、エンジンパワーがデカイほうが有利なので、危機回避率を少しでも高めたい人はターボを選ぶべきでしょう。ターボは燃費が悪いとのイメージもありますが、飛ばさなければリッター13kmぐらいは走るので、イザという時の加速力を思えば全然悪くはありません。 ⇒【写真】室内、エンジンなどはコチラ
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 エコカーでチマチマとエコ運転に興じるのにはそろそろ飽きてきたという人、まさかの危機から脱する可能性を少しでも高くしたいという人に、激しくオススメしたい一台であります。 <取材・文・撮影/マリオ高野>
1973年大阪生まれの自動車ライター。免許取得後に偶然買ったスバル車によりクルマの楽しさに目覚め、新車セールスマンや輸入車ディーラーでの車両回送員、自動車工場での期間工、自動車雑誌の編集部員などを経てフリーライターに。その後、群馬県太田市へ移住し、現在は太田市議会議員に。X(旧Twitter):@takano_mario
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