横浜解雇のマイナーリーガー小林、プエルトリコで躍動
「日本でクビになって良かった。人間、万事塞翁が馬ですよ」
昨年10月にDeNAを解雇された後、MLBの伝統球団、クリーブランド・インディアンスと異例のマイナー契約を結んだ小林公太、21歳。(【異例】 DeNA育成戦力外投手がメジャーに挑戦!https://nikkan-spa.jp/340300)
メジャーリーグの大舞台を志す右腕は現在、カリブ海に浮かぶ小さな島国プエルトリコにて、現地の教育リーグに自腹を切って参加している。(※自ら費用を捻出してプレー機会を得る「教育リーグ」は、プレーの対価として給与が支払われる「プロリーグ」とは一線を画す)
小林が参加しているリーグには、独立リーグを含めたプロ球団との契約を目指す若手選手たちが世界中から集っている。まさに多種多様なバックグラウンドを有する多国籍軍団だ。リーグは「勝利よりも個々のレベルアップ」という明確なポリシーの下で運営されており、バスで毎日異なる街に遠征して試合を行う。
野球のレベルは、正直言って高くない。観客は多くても100人程度。お粗末なエラーは日常茶飯事、投手が足りなくなり7回で試合が終わることも。小林はチーム内で唯一プロ球団、それもマイナー契約とはいえMLB球団との契約を有する選手だ。そんな小林が敢えてこのリーグに参加している理由は、自分の全く知らない世界に飛び込み、野球選手として海外で生き抜くバイタリティを1日でも早く培いたいからだという。
実は記者は、今日までの1週間、小林が所属するチームに帯同し、グラウンドはもちろん移動のバスからホテルまで選手達と生活を共にしている。現地の小林を見ていて最も印象的なのは、小林が外国人選手たちと積極的にコミュニケーションをとり、驚く程チームに馴染んでいることだ。
インディアンスの入団会見時に「(英語がわからなくとも)ボディランゲージと下ネタで何とかなる(笑)」と話していたが、まさしく有言実行。片言の英語でも自分の考えを相手が理解するまで伝えようという姿勢に加え、体を張ったギャグで周囲を爆笑させるシーンも。チームメイトや首脳陣は「コータは最高にファニーな男だよ!」と口を揃える。
「(DeNAで同僚だったプエルトリコ出身の)ジオさんが帰国するとき、プエルトリコは危険だから帰りたくないと言ってたんですけど、何がどう危険なのか自分の目で見たくて。で、実際来てみたら、全然危険じゃない(笑)。海外でプレーしたいと口にする選手は多いですけど、実際に行動に移す人って少ないじゃないですか。1度きりの人生、リスク取って行動したいですね」
小林はリスクという言葉を口にしたが、彼の選択にはむしろ「賢さ」を感じる。異国でのタフな競争社会を戦う経験は、今後の小林公太という人間の幅を間違いなく広げるからだ。「正直、この人、野球辞めたらどうするのかなと心配になる選手もいる。自分はそうなりたくない」とも語る。どんな選手にも必ず訪れる引退後の人生を考えると、閉鎖的な日本球界で野球漬けの日々を過ごす方が、ある意味リスクは大きいのではなかろうか。
「最近、写真にハマってるんですよ。今年1年アメリカで頑張れたら、オフはイタリア旅行に行こうと思って」。異例のメジャー挑戦を通じた小林の生き様には、野球選手としてはもちろん、一人の若者としての無限の可能性を感じた。
●小林公太ツイッター:https://twitter.com/KotaSPF
●小林公太ブログ:http://ameblo.jp/kotakobayashi/
<取材・文・撮影/スポーツカルチャー研究所>(プエルトリコ支局)
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海外スポーツに精通したライターによる、メディアコンテンツ制作ユニット。スポーツが持つ多様な魅力(=ダイバーシティ)を発信し、多様なライフスタイルを促進させる。日刊SPA!では3月に始まるWBCや、MLBの速報記事を中心に担当
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