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侍JAPANの意外な難敵はメジャー屈指の「変態」球場

 明日、いよいよ準決勝に臨む侍JAPANにとって、意外な難敵となりそうなのが、戦いの舞台となる球場、AT&Tパークだ。  WBC 3連覇の快挙が現実味を帯びてきた日本代表。準決勝の相手は、初の決勝ラウンド進出を果たしたプエルトリコに決まった。日本が格上だが、ベネズエラやアメリカなど優勝候補を次々と撃破し、勢いに乗るプエルトリコは決して悔れない相手だ。  両者にドミニカ、オランダに加えた4ヶ国が激突する決勝ラウンドの舞台は、昨年のワールドシリーズを制したサンフランシスコ・ジャイアンツの本拠地であるAT&Tパーク。2007年のMLBオールスターでイチローが史上初のランニング本塁打を放ち、MVPを獲得したことでも知られているこの球場は、実は非常にクセのある、メジャー屈指の「変態」球場として知られている。  アメリカの球場は日本と異なり、左右「非対称」なデザインが一般的だが、なかでもAT&Tパークは左右で大きく構造が異なるメジャー屈指の変則型球場だ。 ⇒【画像】AT&Tパークの拡大写真はこちら
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決勝ラウンドの舞台AT&Tパーク。球場後方にサンフランシスコ湾が広がる美しい景観と、ライト側のフェンスの異様な形が特徴。「逆Z字」状に凹んでのがお分かりになるだろうか

 ホームからレフトまでの距離約103mに対し、ライトまでは約94mと、約10mも短い。その代わりライトフェンスは約7.6mもの高さがあり、右中間が極端に深く(センターよりも深い!)設計されている。  さらに、その右中間フェンスの途中には何とも珍しい「くぼみ」がある(「逆Z字」状と言おうか、説明しづらいが)。そしてこの「くぼみ」が、クッションボールを処理する外野手を度々困らせる。長野、糸井ら、左右対称な日本の「素直」な球場に慣れた日本の外野陣は、この他に類を見ないフェンスへの対応が求められるのだ。  一方で打者の視点から見ると、フェンスが高いためライナー性の打球では本塁打が出にくいが、スタンドへの距離は近いため、高い弾道の打球であれば他球場よりも本塁打になりやすい。  この球場のもうひとつの特徴が、ライトスタンド後方の場外が、港町サンフランシスコらしく入り江となっていること。この入り江に飛び込む場外ホームランは「スプラッシュ・ヒット」と呼ばれ、ボートに乗ったファンが待ち構えてボールを奪い合う光景が名物となっている。  本日、サンフランシスコ入りした取材班が球場周辺を視察に訪れた際、この入り江前にある遊歩道に座り込んでいる、自由人風の男性2人組を見つけた。話を聞いてみると、何と彼等は10年以上もこの入り江で場外ホームランキャッチを続けている、「筋金入りのスプラッシュ・ヒット・ハンター」だった!

ライトスタンド場外で長年、場外ホームランを捕り続けてきた地元ジャイアンツファンの2人。新庄剛志選手の打席を明確に語るなど、生き字引のよう

 過去に手に入れたボールをひとつひとつ「これはバリー・ボンズの第何号」といった具合に、誇らしげに見せてくれた。  さらに彼らは、明日の準決勝の話になると「日本に左のパワーヒッターはどれくらいいるか」「何でマツイがいないんだ」と、取材班に矢継ぎ早に質問。目の付け所が「左の強打者」に特化しているのが流石である。松井秀喜は米国でもスラッガーとして認められていた希有な存在だったのだと、思わぬ形で再認識させられた。  そんな彼等が期待する侍ジャパンの選手といえば、満場一致で阿部慎之介だ。2次ラウンドのオランダ戦でも見せた高く舞い上がる芸術的なホームランを、我々日本人だけでなく地元のハンター達も(球場の外で)心待ちにしている。日本を決勝に導き、そして地元民をも喜ばせるキャプテンの「スプラッシュ・ヒット」を大いに期待しよう! <取材・文・撮影/日刊SPA!WBC特別取材班>
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