モー娘。OG 高橋愛が語るリーダー論【その2】

 仕事をする際には、「リーダー」が必要である。「リーダー」はメンバー全員をまとめ、組織を成功に導くべく動き、心を砕くも時に代表の責任として怒られることがあり、またメンバーから妬まれることもあるわけだが、では、どんなリーダーが理想的なのか。  20歳にしてモーニング娘。の「リーダー」になり、現在はミュージカル「ウェディング・シンガー」のヒロイン役として、そして夏にはエステー主催のミュージカル「赤毛のアン」の主役・座長として俳優陣をリードする立場にある女優・ミュージシャンの高橋愛さん(26)にリーダー論を聞いた。【その2】 ⇒【その1】はコチラ https://nikkan-spa.jp/408251 ◆派閥化する(?)モー娘。をまとめる技術 ――モーニング娘。の中で派閥・グループ化はするものでしょうか? 高橋:ある程度は分かれるものですよ。2~3人とかになりますかね。私は、そういったグループのみんなと一緒の食事とかはなるべく平均的に行くことを心掛けていました。もちろん、すごく仲が良い子もいたのですが「この前はこのグループと一緒だったから、今回はこっちと一緒に行こう」みたいにし、特定の誰かとベッタリするようなことはありませんでした。 むしろ、1対1が多かったですね。「よし、行こう(キリッ)」と誘うんじゃなくて、「○○ちゃん、行こうよ~!」みたいに誘いました。そして、説教するために行くとかではなく、その子が今の仕事や、メンバーについてどう思っているかを聞くために行っていましたね。 ――まさに上司ですね。でも、上司とはいっても、モーニング娘。というとんでもない売り上げを持つグループの中の上司なワケで、けっこう大変だったのではないですか? ソロライブ時高橋:いやぁ~、今考えるとすごかったですね。私自身は在籍期間も長かったし、リーダーの期間も長かったのですが、辛かったこともありますよ。とにかくシビアなんですよ! CDの売り上げとか、チャートで1位を取りたかったのに取れなかったり……。あと、露出が少ない時期もありましたから、かなりキツかったです。あまり露出がない時期とかは、レベルあげなくちゃ、とレッスンを皆でしていました。 ――一人じゃなく、皆を誘ってやっていたんですか? 高橋:そうです。やっぱり、皆でやらなくてはダメです。組織というものは、意識合わせが重要です。組織が目指す方向として「皆が皆、カッコよくなきゃダメ」ってものがありました。だからこそ意識を合わせる必要がありましたし、皆がお互いに言い合うようにしていました。あそこのパート、本当はこうすべきだと思うけど、どうですか? なんて提案をされたら、「じゃあ変えよう」って皆で決めていましたね。いかに同じ方向を向くようにするか、ということが重要です。 ――今回の「赤毛のアン」では、主役を演じるわけですが、リーダー的なものが求められるのではないでしょうか。モーニング娘。の時は、気心が知れたメンバーを束ねていましたが、今回は各所から集まった人をどうやって束ねていくのですか? 高橋:今回は楽しみです。モーニングとの違うところって何かな……。たとえば、モーニングの時って、ミュージカルをやったり、シングルを出すとかいったところで皆が同じ方向を向かなくてはなりません。ミュージカルの場合、得意なメンバーもいれば、苦手なメンバーもいたので。そこをなんとか同じ方向に向かわせるのがとても難しいところでした。
2012年公演画像2 (高橋さんダイアナ役)

「赤毛のアン」2012年公演

でも、今回の「赤毛のアン」の場合は、アンが大好きな人で、ミュージカルが大好きな人ばかりが参加しているので、実はやりやすいんですよね。去年も私はダイアナ役として参加しました。今年は主役のアンで、私が座長だから頑張って引っ張ろう――ではなく、アットホームな雰囲気で作り上げたいな、と思います。妙にリーダー然とするのではなく。そういうところが皆に伝わればいいですね。 といいますか、ビシッと厳しくいくリーダーよりも、私の場合、こういったアットホームにしたい、というやり方が一番合っているのかもしれない。私は「ああしろこうしろ」って指示ができる人じゃないですし……。 ――むしろ「愛さんを助けたい!」って思わせる何かがあるのですか? 高橋:私が頼りないから、周囲の人が「もぉぉぉぉぉ!!!!」なんて思って勝手に動いてくれるのかもしれませんね。私は昔、先輩からの可愛がられ方を知らなかったんです。長女ですから。もちろん、上の人を大事にすることは重要ですが、後輩を大事にすることってかなり重要なんじゃないかな。 下を可愛がらなくてはついてきてもらえないんですよ。上に媚びている姿よりも、下を可愛がっている姿ってものを見てもらわなくては、信頼関係は生まれません。同じものをつくるにして、上に立つ者として、動いてもらわなくてはいけない。そんな時に、普段からいかに後輩を大事にしているか、ってことが試されるんです。私は、リーダーってああだこうだというよりも、「一緒に歩こうヨ!」みたいな姿勢の方がいいんじゃないかと思っています。 ――ご自身がリーダーになる前のリーダーからはどんな感じに接せられていたのですか? 高橋:当時リーダーだった飯田圭織さんに怒られたことがあり、それはいまだに覚えています。普段、怒られることはないのに、なんでこんなに怒られないといけないの! と思い、実家の福井に帰りたいと思っていたほどです。 でも、今思うと、飯田さんはあえて悪者を買って出ていたと思うので、それは辛かったのではないでしょうか。私が加入した当時、飯田さんもリーダーになったばかりで葛藤はあったと思います。飯田さんは卒業した後も、コンサートとかいつも来てくれています。「よかったよ」と言ってくれるし、「面白かったよ」、と褒めてくれます。「あ、いつも見てくれているんだ」と感じています。飯田さんは、私とは違い、ああしたほうがいい、こうしたほうがいい、と言うタイプのリーダーです。すごくマイペースな人で、仲良くなってから飯田さんの可愛さが分かりました。 私だってわかってるんですよ。リーダーはエラソーなほうがいいってことは。いかにも「リーダー」って分かる方がいいじゃないですか。だから、私も本番の前とかは「行くぞ!」みたいに喝を入れたり、「シャーッ!」なんて気合を入れたりはしましたよ。基本的に私は体育会的なんですよ。さっきから頼りないリーダーだったって話ばかりしてはきましたが、「ほら、やるよ」とか「集合ッ!」なんてことはちゃんと言っていましたからね。そこのところは誤解しないでくださいね。 ◆現リーダー・道重さゆみは「強がる人」 ――現リーダーの道重さゆみさんは今、どんなリーダーですか? 高橋:彼女は強がる人ですね。言ってはこないとは思いますが、けっこうしんどいんじゃないかな……。同期も卒業しちゃうし、一人で引っ張らなくてはいけない。私にはガキさんがいましたが、その状況とは違うと思います。しかも、年齢が一周り違う子を引っ張らなくてはいけないというのは相当大変だろうな、と思います。私の時は、ひと周り離れている子もいたのですが、いわば「中間管理職」みたいなメンバーもいたのでやりやすかったと思います。 私の時は、メンバーがある程度大人だったんですよね。大体のメンバーが20歳を越えていました。ガキさんがリーダーになった時に「かくれんぼとかしなくちゃいけないんだよ~」なんて言っていましたね。そんなことまでしてるんだ! と驚きましたが、お客さんからお金をもらってパフォーマンスをするわけですから、子供な態度ではダメです。お金をもらう態度とかも含め、若い子にキチンと伝えていかなくてはいけません。 さゆ(道重)は、どんどん新しくなっていくモーニングをきちんとまとめていると思います。彼女はちゃんとしていますよ。 ――メンバーからリーダーになって、何か変えたことはありますか? あまり、他のメンバーとつるまないようにしました。 ――えっ? 愛ちゃんは冷たくなった、なんて言われませんでしたか? 高橋:でも、誰かとつるむと「平等」だと思われなくなるでしょ? リーダーはそうせざるを得ないんじゃないかな。あとは、公の場では自分の発言を控えるようにしました。打ち合わせとかの席ではちゃんと意見を言いますが、番組とかに皆で出演する時は、自分がしゃべるというよりも、バランスを見て誰かに振り、皆が喋れるようにしました。だから、「卒業してからの方がよく喋るようになったね」と言われます。 ――リーダーの経験を生かして、経営者になったりとかは考えていないのですか? 高橋:経営者になる気はありません! そういうのは苦手です! で、今ユニットから離れてソロになりましたが、ユニットで活動していた経験はすごく大きいと感じています。これだけミュージカルが好きになったのは、モーニングで活動してたからこそ。あの時に「あ、自分はミュージカルが好きなんだな」と思ったりもしたから、今こうして舞台を楽しめているんじゃないかな。 つんく♂さんは「モーニング娘。は修業の場だ」と言います。そして、こう続けます。「卒業してからはじめて歩きだすんだ」とも。 <取材・文/中川淳一郎> ⇒【その3】に続く https://nikkan-spa.jp/408473  高橋愛さんが現在出演しているミュージカル「ウェディング・シンガー」は、福岡・博多座:3月23日(土)~24日(日)/岩手・岩手県民会館大ホール(貸切公演): 3月27日(水)~28日(木)/東京・日本青年館:3月31日(日)にて上演。  また、高橋愛さんが主役のアン役として出演する、エステー株式会社主催のTOURSミュージカル「赤毛のアン」は、高橋さんと共演するキャストのオーディションを3月22日(金)の名古屋を皮切りに全国7都市で実施。  同公演は8月11日(日)から全国8都市で行われ、全公演、全席無料で観客を招待する。4月上旬から6月末まで、公式サイトのほか全国のドラッグストア等に設置する応募ハガキより応募できるチケットプレゼントキャンペーンを行う予定。 ●TOURSミュージカル「赤毛のアン」公式サイト http://www.st-musical.com ― 元モー娘。高橋愛が語るリーダー論【2】 ―
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