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「12人目の選手」元ボールボーイが語る恐怖の体験

サッカー,イングランド「何やってんだ!」  ゴール裏のサポーターたちが、一斉に罵声を浴びせた。傍らにはうずくまる少年。怒気を孕んだスタジアムは、この日事件を目撃した。  サッカーの母国、イングランドで今年1月に行われたリーグ・カップ準決勝、スウォンジーがホームで迎えたチェルシー戦。スコアレスで迎えた終盤、格上のチェルシーは必死の攻勢に出る。1stレグを勝利し、引き分けで十分なスウォンジーは水際でことごとくシャットアウト。  78分、焦るチェルシーは攻め手なく、スウォンジーがゴールキックを得る。しかしここで、試合の進行を補助するボールボーイの少年がそのボールを放さない。露骨な「時間稼ぎ」に業を煮やしたチェルシーのアザールは、あろうことか少年を蹴飛ばしてしまった。ブーイングと歓声で騒然とするスタジアム。審判はアザールに対して、一発退場を命じた。結局、この試合を引き分けたチェルシーは、カップ戦から敗退した。  ボールボーイを蹴飛ばすという暴挙に出たアザールへの批判も当然あったが、ボールボーイがスウォンジー幹部の息子であること、また彼が試合前日にツイッターで「時間稼ぎが必要だ」と呟いていたことが判明すると、事件は拡大の一途へ。労働者階級を中心とするイギリス中のサポーターから「金持ちなんてクソ食らえだ!」と批判の声が上がった。少年の「チーム愛」が、思わぬ騒動へと発展してしまったのだ。 ⇒【動画】はコチラ https://nikkan-spa.jp/428584 http://www.youtube.com/watch?v=OSMFx8ifmQw  ボールボーイの仕事は、試合のスムーズな進行を補助すること。ピッチの周りで待機し、ラインから出たボールを選手へと返す。立場的には当然中立であるべきだが、そうもいかないようだ。 ◆鬼の形相で迫ってきた闘莉王に「チビりそう」  学生時代に登録制の派遣スタッフとして、某チームのJリーグの試合でボールボーイを務めていたというS君はこう話す。「そりゃあ、ホームゲームを何試合も担当するとチーム愛も芽生えてきますよ」。  S君は’06年のシーズン中、浦和レッズをホームに迎えての一戦でボールボーイを担当したという。レッズ相手にホームチームがリードする展開で、試合終盤にS君の前にボールがこぼれてきた。ホームチームの勝利を願う彼はここで、自主的にボールを渡すのを遅らせたという。  するとそこへ走ってきたのは、鬼のような形相の田中マルクス闘莉王(当時浦和)。強面で知られる184cmの大男は「早くしろ!」と彼に怒号を浴びせ、ボールを催促した。あまりの迫力に「チビリそうになった」という彼は、すぐさまボールを闘莉王へ。S君は幸い蹴飛ばされることなかったが、試合終了後は急いでピッチを後にしたとのことだ。  ときに「12人目の選手」になりえるボールボーイ。今度スタジアムを訪れた際には、彼等の動きにもぜひ注目してみてほしい。 <取材・文/スポーツカルチャー研究所> http://www.facebook.com/SportsCultureLab 海外スポーツに精通したライターによる、メディアコンテンツ制作ユニット。スポーツが持つ多様な魅力(=ダイバーシティ)を発信し、多様なライフスタイルを促進させる。日刊SPA!ではMLBの速報記事を中心に担当
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